第10話


 ✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎シルビア引きこもりの日々✴︎✴︎✴︎✴︎



「や、やっ!」


 はぁはぁ……気持ち悪い。


 目を閉じるとあの時のことを思い出して震えが止まらない。


 あの日から部屋から出られない。


 ベッドから窓に目を向ける。見えるのは明るい澄み渡る青い空。窓を開ければ鳥の鳴き声が聴こえるのだろう。


 だけど窓は固く閉じている。本当はカーテンもしっかり閉めて外が見えないようにしておきたかった。


 だけどそれはダメだとジュリとカイラが言うので昼間だけはカーテンを開けている。


 コンコンッ。


 扉のノックの音が聞こえる。その音だけでも体がビクッとして怖くてたまらない。


 若い男性が怖い。若い男の使用人には、悪いけど侯爵家へ行ってもらうことになった。


 この屋敷の中で、たまたま出会ってわたしは恐怖で泣き叫んでしまった。彼が悪いわけではない。ただ……まだ怖くて……


 騎士は若い男性がたくさんいる。このままでは仕事ができない。本当はミゼルにお礼も言いたい。助けてくれなかったら今ごろわたしは……多分自殺していただろう。


 アレックはわたしがこんな状態でも帰ってくることはなかった。醜聞にまみれた妻など恥ずかしくて相手にする気にもなれないのかもしれない。


「はああ、仕事も辞めないといけないわ。それに……王命だけど……早めに離縁できないか団長に相談してみよう」

 ただまだ団長とも会っていない。


 なんとか接する方ができるのはビルとダンだけ。二人は男性だけどそれなりにお年をとっているので怖くない。


 団長は30代。会ってみないとわからないけど、団長なら平気な気がする。


 お兄様のようなお父様のような存在。


 離縁したら公爵家で使用人として雇ってもらえないかな?


 あっ、でも、男の人がたくさん使用人にいるわよね?


 誰とも接しないで働ける職場なんてないかな……洗濯だけするのはどうかしら?


 一人でずっと……お菓子作りの職人なんて……いらないかな?


 わたしはもう何日も部屋から出ることができないでいた。







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