第4話 終末の食材

二軒目。一軒目に訪れた時は断られたお店に再度行ってみる。丁度席が空いたということで小上がりに通される。もはや足が濡れたことなど気にする者は居なかった。小上がりに上がり、各々好きなものを注文ということで、ビールと唐揚げ、魚の塩焼き、コーンバター、じゃがバターを注文。

お通しの冷奴をつまみながらビールで乾杯。


私とオグさん以外は役所勤めである。ある程度忙しい時期が過ぎれば役所内をウラウラ動き回って時間を潰している季節労働者のような働き方であることを聞く。サラリーマンのオグさんと私は羨ましいと笑いながら空いたビールジョッキを下げお代わりを注文する。サラリーマンで馴染んでしまった悲しき習慣である。


最初に注文したものが来た。何となく焼き鳥が食べたいということで串焼き10点盛りを追加オーダー。

待ってる間、ふと、ケー君が話を振ってきた。


この間、終末の世の夢を見た。そこでは酪農や農業、漁業等一次生産をしながら皆逞しく生き永らえる方法を見つけながら各々村のような自治体を作り生活していた。

夢から覚め、考えてみた。そういえばあそこの村ではとうもろこしを作っていなかった。作りやすさ、加工次第ではコーン油などがあることから、コーンはマストで必要だろう。と言うのだ。

そこから飛躍して、そもそもそういう終末の世になった際、コレしか食べれませんとなった時、君らはどういうものを育てるかずっと聞きたかったと言うのだ。


各々頭を悩ませた。それは全世界的にそれしか食べられないのかとオグさんが確認をする。

それだと現実味がないので面白くない。物々交換も出来る世界線で、コレなら一生食べていけるモノにしよう。となった。


各々選んだ食材は、麦、コーン、米、じゃがいもが選出された。


各々選んだ理由を述べて行く。


コーン。食べて美味しいのは勿論、油が作れる。天然の油田のようなもので、それを育て物々交換することで、色々なモノと交換できる。何たって油。唐揚げを揚げるのも油。全ての揚げ物に必要な油。そしてそれを容易に生産できるコーンこそ終末の世に必要な食材である。


ケー君の力説に、なるほど、そういうお題ねと皆が納得。次々に主張が飛ぶ。


米。油の生成も可能。酒も出来る。その上、日本人の主食ではあるものの、全世界的に親しまれている穀物である。おにぎり屋も出来る。これをもって物々交換も可能。


麦。何と言っても麦茶。そして麦酒つまりビールである。この、今飲んでいる、キンキンに冷えてやがる悪魔的なビール。そして、精製して粉状にすればうどんやお好み焼き、パン等可能性に満ち溢れている!

麦こそ終末の世にふさわしい!


じゃがいも。皆大好きポテトフライ。吹かし芋、マッシュポテト、ポテサラ、ポテトチップス、片栗粉等々、加工も簡単で保存も効く、これほど便利な食材はない!


...日本酒はいいとして、ビールは魅力的だなぁ...


あれだけコーンを推していたケー君が揺らぎ出す。


...加工無しにしようか。ビールはズルい...


それを言うたらコーンこそ必要ねぇわ!加工ありきのコーンだろう!


そんな!焼いても湯がいてもうめぇわ!コーンバター見ろ!


いやいや、これはバターと塩が旨いんだ!味付け次第だわ!


誰もがハタと気づいた。塩である。

加工するにも保存するにも、塩がなければならん。


...塩、圧勝だな。

...確かに。今目の前に出てる全ての料理に塩が使われてるもんね。

...いや、しかし、終末の世になっても塩て...

もう少しそれだけで価値のある食材ってないのかね?

...食材があっても、塩あっての食材だな...

醤油は?!

いや、塩使ってる(笑)

魚の砂糖焼きより塩焼きがいいしな。焼き鳥に砂糖はなぁ...


...塩強すぎるからさ、調味料は有りの世界観で行こうか!

...油は?

...ん~...有りで!

じゃあもうコーンはねぇわ!

...うん、おれ、麦にする...

ビールつよ!

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