おっさん珍道中2

紫音

第1話 ある晴れた日に

11月。

寒くなった。

凍える手を丸め口許に持っていく。

口から出る息が掌を暖める。

畑の残渣処理をしながら、鍬で土を掘り起こす。雑草を取り除くやる気はない。米糠を隙混ませ、これで何とかならねぇかなと思う。


春からうつ病を煩い、気がつけば年が変わる季節。畑も年越しだな。

実家の裏山にある竹藪。春から夏にかけて伐採したのに、もう藪になっている。逞しい。それに比べて俺は...。

情けない気持ちを抑えながら、来年の抱負を決めようと鍬を畑に入れながら、何一つ前進せず決めきれない。自責の念に押し潰されそうになるのをやっと畑作業で気晴らしが出来ている。それが終わる。もう気晴らしになる事がない。釣りでもしようか...黙々としている時間が鬱々としてしまう。やめよう。バスケでもしようか。寒いな。足痛くなるしな。...いかんいかん。何かしよう。何かしてればきっと気が紛れる。...思っていることを書こう。よし!これだ!


かくして、この中年は物書きをする事になった。その物書きがとんでもない事を巻き起こすことになるとは知らずに。







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