荷物運搬スキル持ち追放される~成長したら空輸もできるのに~

とまと

第1話

「ナッシュ、お前を追放する」

 Aランクパーティー蒼鷹のリーダーから、ドラゴン討伐直後に突然告げられる。

「は?……追放?」

 突然のことでそれだけ口にするのが精いっぱいだった。

 立派な筋肉を持ちつつも甘いマスクで女性に人気があるリーダーのケインは、ふっととろけるような笑顔を見せる。

「悪いな、ナッシュ。じゃ、素材袋はパーティーのものだからもらってくよ」

 ケインがそう言うと、盾役のゴランが俺が背負っていたリュックを取り上げた。

「ま、待てよっ!」

 手を伸ばしてリュックを取り返そうとすると、ゴランの前に魔法使いのミーシャが立つ。

「ナッシュ、今まで雑用を一手に引き受けてくれてありがとう」

「そうね。宿の手配から武器の手入れ、それから魔物の素材回収と荷物持ちだけ……だったかしら?」

 ミーシャの隣に、弓使いのマリアも立った。

 二人は双子だ。スタイルが良くて美人の双子。

「それだけじゃない、俺は」

 パーティー……蒼鷹にはもっと尽くしてきた。結成した時から、俺にできることは何でもやった。

「あはは、だけなんてかわいそうだろうマリア。ナッシュは本当によくやってくれたさ」

 ケインがマリアとミーシャの肩を抱いて俺を蹴飛ばした。

「二人に色目を使ったり、分け前をもっとくれと言ったり」

 ケインの言葉にやだぁとミーシャとマリアが笑った。

「色目なんて使ってない、俺は、二人には興味が……ぐぼっ」

 ミーシャから風弾が飛ばされ腹に衝撃を受ける。

「分け前は、……皆の半分しかもらって……ぼふっ」

 ケインが剣の鞘で俺の肩を打った。

「俺たちが命がけで戦っているというのに、お前は素材回収と荷物持ちの楽な役割しかしてなかった。それなのに、俺たちの半分も持っていくなんてひどすぎるだろうというのことで皆の意見が一致した」

 確かに、俺は戦闘では役立たずだ。

 俺のスキルは、素材回収と荷物運搬。

 だからこそ、もっと役に立とうと、俺の分け前から、回復薬を買っている。

 それに、素材を1つでもたくさん運べるようにと……。

「分け前から、その収納魔法が付与されたリュックも買ったし、宿代だって武器の修繕費だって全部俺が出してた。だから、実際俺の手に残ったのはほんの少しで……それより、返してくれ、リュックを!」

 手を伸ばすと、ゴランの大楯で弾かれて背後の木で背中を強打する。

「ぐふっ」

 苦し、息が……。

 4人は俺に背中を向けて立ち去って行った。

 まだ言いたいことがあったけれど、息ができずに何も言えない。

 そのリュックは……返してくれないと……と説明したくても声が出ない。

 ミーシャが振り返ってにこりと笑う。

「そうだわ、これがないと困るでしょう?」

 ミーシャが、リュックに吊り下げていた魔物解体用のナイフを俺の足元に投げる。

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