天文学的恋愛事情

きり

黒のウェディングドレス

 私は夜が嫌い。だって、あなたがいないから。

 朝はもっと嫌い。あなたが私以外を照らすから。

 でも、夕暮れ時は少しだけ好き。あなたを眺めていられるから。

 毎日、あなたを追いかけるけれど追いつけやしない。

 あなたがいなくなると、私の気持ちみたいに空も真っ暗。

 いつだってあなたに見られてもいいように身だしなみには気を遣っているのよ。あなたは気付かないだろうけど。だって、あなたは私を見てくれないものね。

 慰めみたいに星が輝くけれど、気休めにもならない。暗いことには変わらないんだもの。地上の方がずっと明るくて、少しだけ惨めな気分。

 だから、八つ当たり。

 ほら。今日は追いついたから、あなたの傍まで行ってみる。

 あなたが眩しく輝くから、誰も私に気付かない。

 でも、だんだんと空が暗くなってきたから、みんな不思議がってあなたを見上げてるわ。

 でも、だめ。

 今だけ、あなたは私のもの。

 あなたの光を独り占めするの。

 私が全部受け止めて、みんなにはあげない。

 今だけ、愛しい“私だけのあなた”。

 そうしたら、あなたが私の左手を取るの。

 いきなりだからびっくりしちゃった。

 気付いたら、私の左手に指輪がはまってる。

 こんなこと初めてだったから、どう反応したらいいか全然わからない。

 顔が熱くて仕方ないわ。

 どうして、あなたはそんなにも普通でいられるの?

 少し悔しいからお返し。

 顔を近付けてあなたに触れる。

 私の誓いを受け取ってください。

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