女体限定、尻按摩師
しょうわな人
第1話 リー侯爵家
タダガウ王国にジョブ拳聖を輩出する侯爵家があった。現在の当主であるジェッツ·リーのジョブは当然ながら拳聖で、その長男であるバッツ·リーは拳王であった。
しかし次男のナッツ·リーが拳聖を授かったのでリー侯爵家の跡継ぎに決まった。
ジョブを授かるのは十二歳の時に儀式によって神より授けられる。ナッツ·リーが拳聖を授かってから二年後、三男であるケッツ·リーは儀式を受けていた。
「
『えっと、いや…… 何?
授けられた当人は困惑し、リー侯爵家当主のジェッツ·リーは怒りを堪えているのか両手の拳を握りしめてプルプルさせている。
拳聖は既に次男が授かっていたので、長男の拳王といかなくても、拳鬼ぐらいは授かるだろうと考えていたのだが、まさかの按摩師である。
それも女体限定の上に按摩する部位も
「ケッツよ! 早く下がれ!!」
父親であるジェッツに言われて下がるケッツ。実はケッツには誰にも言ってない秘密がある。それは前世の記憶がある事だ。
地球という星の香港という都市で産まれたが父親も母親も日本人であった。
けれども産まれた土地柄でケッツも拳法を学んでいた。八卦掌と陳式太極拳である。
どちらも功夫を積み地道に愚直に老師の言うことを学んだ前世のケッツは経絡秘孔、気道、血道についてその全てを学んでいた。
そういう意味では按摩師というのも外れではないケッツであったが父親の顔を見てこりゃダメだとも分かっていた。
それに同い年の寄り子貴族八家の子息子女たちの目線が自分を見下しているのも感じていた。
『これは近い内に父上から放逐の話が出るな……』
ケッツはそう思い覚悟をしていた。まさか屋敷に戻って直ぐの話だとは思わなかったが。
「ケッツよ、お前には失望したぞ。神から按摩師などのジョブを授かるとはな…… バッツまでとはいかぬがせめて拳鬼ぐらいを授かったならばナッツの補佐役としてこの家に残してやっても良かったのだが…… ケッツよ、貴様は学園卒業後の十六歳の誕生日に我が家より放逐するっ!! これは決定だ、良いなっ!!」
ジェッツの言葉に母親であるマリア·リーが抗議の声を上げた。
「あなた! ケッツが望んでそうなったのではないわ! 神にも何かお考えがあってケッツにジョブを授けられたのよ。それをあなたの希望のジョブじゃないからといって放逐するなんて!!」
「黙れ、マリア! 家長である私の言葉はこの家では絶対だ! ゴチャゴチャ言うならば離縁するぞ!!」
「母上、どうかお止め下さい。きっと私の努力が足りなかったのでしょう。私は神より授けられたこのジョブで何とか生きていきますので、どうかご安心を。それに成人までは父上も面倒を見てくださるようですので」
マリアに対しては優しくそう言い、父親に向かっては
「父上、全て承知いたしました。ケッツ·リーは十六歳でこの家を出ていきただのケッツとして生きていきます!」
と眼力を込めて言い放ったのだった。
「ふん! 成人前の子供を放逐するのは貴族社会では認められてないからな! 学園には通わせてやるがそれが済めば親子でも何でもないからな! 生きる
「失礼します……」
ジェッツの前を去り自室に戻ったケッツだが直ぐにノックされて扉を開けるとマリアが立っていた。
「あなたを守れなくてごめんなさい、ケッツ……」
今世の母親であるマリアは長男バッツ、次男ナッツ、三男ケッツを産んだとは思えないほど若々しい。バッツを産んだのは十六歳の時である。次男ナッツを産んだのが二十歳の時である。ケッツを産んだのが二十二歳で今は三十四歳なのだが、ケッツが前世を通して考えても二十代前半にしか見えない若々しさだ。
「母上、どうかあまりお気になさらずに。私自身はホッとしてもいるのです」
ケッツの言葉にマリアは驚く。
「まあ! どうしてなのケッツ! あなたはこの家から出されて貴族じゃなくなってしまうのよ!? それなのにホッとするだなんて?」
「どうも私は貴族社会には馴染めないようで、いつも
実際に前世の記憶があるケッツからすれば何事も規則が多く、腹芸で相対しなければならない貴族社会は気詰まりであったのだ。それに、後継者となったナッツの傲慢な態度にも嫌気がさしている。
バッツは誰にでも分け隔てなく優しい人柄で、もしもケッツが当主ならば次期後継者にはバッツを推したであろう人物だ。
「そう、そうね…… あなたならそうかも知れないわね。既にジェッツよりも強いあなたなら」
「っ!? 気づかれてましたか、母上…… その事は父上には?」
「言える訳ないでしょう。あのプライドだけで生きてるジェッツに」
マリアとジェッツは政略結婚である。お互いに愛情は無い。貴族の義務として子を成しただけだ。それも高位貴族は三人以上子を成さねばならないという王国法に則っての事である。
今ではジェッツはマリアに手も触れず、行儀見習いとして来ている伯爵家の次女令嬢のセレナとよろしくやっている。
「有難うございます母上。それでは母上、私から母上に一つプレゼントがあります。私のベッドにうつ伏せで寝て貰えませんか?」
「まあ! ジョブを試すのね! もちろんだわケッツ。ジョブの力は使えば使うほど育つものだものね。私で良ければ喜んで実験台になるわよ!」
溢れくる母性によりマリアはケッツの言う通りベッドにうつ伏せになった。
「それでは失礼しますね、母上!」
そう言いながら母親の
『むっ、いかんな。母上にがんの兆候が出ている。子宮頸がんか、それならば
「んっ!? ああ〜、気持ち良いわケッツ!」
「それは良かったです、母上。もしも痛むようならば言って下さいね」
『痛みを感じるようであればそのツボを押すのは手遅れだと分かるからな。気持ち良いのならばこれで母上は子宮頸がんにはならない。ムッ、見た目では分からなかったが妊娠線を気にしておられるのか、アレを消すにはココだ!』
「ヒャウッ! ケッツ、そこは良すぎるわ!」
『良し! 痛みは感じておられないようだ。後は何かあるか…… そうか肌年齢も気にしておられるのか、それならば
「うっ、ふ〜ん!! アンッ、ケッ、ケッツ! そんな優しく母のお尻を揉むなんて、悪い子だわ!」
よほど気持ち良いのかマリアからは艶めかしい声が漏れている。しかし施術に夢中のケッツは気づかない。それよりもジョブをより深く理解したようだ。
『そうか! 何故【
「母上、少し痛みが出ますがとても良いツボがあるのです。押しても構いませんか?」
「ええ、もちろんよ。ケッツのしたいようにしてちょうだい」
「それでは失礼します! 私も気を入れてなるべく痛みを抑えますね フッ、ハァーっ!!」
押し込む親指に気を流して少しでも痛みを抑えようと試みたケッツ。それが……
「クゥッ、ヒィーッンッ、ダメよ、息子の前でなんて、見ないで、ケッツ、今の母の顔を見ないでーっ!!」
まさか己の母親の絶頂顔を見ることになるとはケッツは思ってもみなかったのであった……
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