第16話 虹色の約束
虹色の光は、まるで生きているかのように書架の間を縫っていく。
「知識は」図書館長が静かに語り始める。「決して固定的なものではありません」
その言葉と共に、書架が変容を始めた。木々が成長するように、形を変え、枝を伸ばし、新たなつながりを作っていく。
「まるで...」リリアが息を呑む。「生命の樹」
「その通り」老人は頷く。「古代の図書館は、知識の"生態系"だったのです」
私の手の中で、台帳が共鳴するように温かさを帯びる。
「藤堂殿」図書館長が私に向き直る。「あなたの中に、新しい可能性を見ました。固定的な分類ではなく、生きた関係性を見出す力を」
「私には、まだ」
「いいえ」ミラが遮る。「あなたは既に示していました。本を導く方法を」
その時、『星の標』が再び光を放った。しかし、今度はより穏やかな、まるで呼吸するような輝き。
「見てください」ヴァイスが指差す。「本が、互いに共鳴を始めている」
確かに、書架という書架から、本が微かな光を放ち始めていた。それぞれが異なる色を持ち、しかし調和している。
「これが」アーサーが剣を収めながら言う。「私たちが恐れていたものですか?」
「恐れは」図書館長は優しく微笑む。「理解の欠如から生まれます」
突如、台帳のページが自ら開かれ、新たな文字が浮かび上がる。
『知識は星のごとく――互いに照らし合い――導き合う』
その瞬間、私には分かった。これから何が始まろうとしているのかが。
「図書館長」私は決意を込めて言った。「この台帳が示す新しい分類法。これは、単なる整理の方法ではないですよね?」
老人の目が輝いた。
「その通り。それは...」
しかし、その言葉は未完のまま。
図書館全体を包む光が、突如として強さを増したのだ。
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