第15話 古の声
光の中から現れたのは、予想に反して小柄な老人だった。
白髪は長く、ローブは古びている。しかし、その眼差しには力強い光が宿っていた。
「よく来てくれました」図書館長は私に向かって微笑んだ。「転生司書殿」
その声には不思議な響きがあった。まるで何千もの本が一斉に囁くような。
「私は...適任だったのでしょうか」
「その謙虚さこそが」老人は柔らかく答える。「あなたが選ばれた理由の一つ」
図書館長は、ゆっくりと周囲を見渡した。
「ミラ」彼女の名を呼ぶ声に、深い愛情が滲む。「よく守ってくれました」
「図書館長...」ミラの目に、涙が光る。
「そして」老人はヴァイスに向き直る。「バルトス機関も、その使命を果たしたようですね」
その時、私の手の中の台帳が、まるで共鳴するように輝きを放った。
「あぁ」図書館長は満足げに頷く。「古の蔵書台帳が、あなたを認めている」
「古の...」
「その台帳こそ」老人は続ける。「全ての始まり。そして、新たな知識の種」
突如、図書館全体が振動を始めた。しかし、それは先ほどまでの不安定な揺れとは異なっていた。
より...生命的な鼓動のような。
「時が来ました」図書館長が告げる。「図書館が、次の段階へと向かう時が」
「図書館長」アーサーが一歩前に出る。「それは、古代魔法文明の...」
「違いますよ」老人は穏やかに首を振る。「これは破滅への道のりではない。新たな共生の始まりです」
その言葉と共に、天井から降り注ぐ光が虹色に変わっていく。
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