短編・君はトモダチ!
大創 淳
Episode 001 想い出は歯車のように。
――外れた歯車が再び噛み合った日、僕は君と出会った。
君はきっと、僕のことを許しちゃいないだろう。……でも、それでも君は友達。遠い遠い日の約束は、今実現しているのだから。そして、やっと交わすことのできた言葉……
あの夏の日、夕闇に見た静かな流れ星。
飛び交う流れ星の行く先、そこで僕らは出会った。
「さあ、おいで」
と、君は手を差し出した。踏切を目の前に、へたり込んでいる僕に……
「君は?」「アリス」「不思議な国のアリス?」「エヘヘ、そうとも言うね。鏡の国の場合もあるけど」「僕は……」「僕? どう見ても女の子にしか見えないけど」
青い目をした金髪靡く白い微笑みの君。薄紅のワンピース。異国の女の子に見えるけれど、言葉が通じている。……そう、明日から始まる二学期の、クラスの連中よりも……
そして僕は、彼女の言う通り女の子。一人称は『僕』
――
名字は、この涙でグチャグチャの顔に似合わないような、キラキラ輝く星のように。
手を取り合った。……酷い顔、と彼女は言うも、でも大丈夫だよ、と温かく、繋いだ手から感じる体温。歩けば、そこは彼女のお家という。そこはまるで、御城のようだ。
聳える白い御城。
そして僕は何処まで来たのだろう? キョロキョロと辺りを見渡して、すると彼女はクスッと、笑い声を漏らして「心配しなくて大丈夫よ。君が綺麗になってから、ちゃんと君のお家まで送ってあげるから。君の御両親にお伝えしたいけど、連絡先は?」と言って、
「あ、これね」と、僕のスマホを手にした。
僕には両親はいない。お母さんだけで、今はまだお仕事中。そして僕は白いワンピースだけど、もはや白から変色をして灰色に。靴も左右の色が疎ら……十歳の夏だった。
今日は夏休みの最終日。外れかけた歯車は噛み合った。流れ星の行く先はここだった。
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