フリーダイヤル1241、エ・リ・シ・ア〜♪
「エリシアショッピングのお時間ですわ!」
エリシアの優雅な声がテレビの中から響き渡る。
彼女は今日は切れ味抜群と噂の包丁を紹介している。
「こちらの包丁、切れ味が素晴らしくて、ギコギコはしませんわよ〜。刃を入れたら、そのままスゥーッと切れるんですの。」
エリシアは自信満々で、まな板の上に置かれたフランスパンに包丁を当てた。だが、どういうわけか、パンに包丁を当てても切れるどころか、刃が少しも食い込まない。
「ん…?」
エリシアは一瞬戸惑いの表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し、再び包丁をゴリゴリと当て続ける。しかし、パンは相変わらず無傷のまま。
「なんでですの……?」
エリシアの眉がピクリと動き、目つきが険しくなった。彼女は半ばキレ気味に、持っていた包丁の峰をバァンッ!と手でぶっ叩いた。
「切れなさいよ!」
衝撃で包丁が少し揺れたものの、パンはまだ切れず、スタジオに微妙な空気が漂い始めた。
エリシアは苛立ちを隠しきれず、再び包丁を手に取った。
その目には決意が宿り、もう一度フランスパンに挑む。
「今度こそ…切れてみせなさい!」
彼女は勢いよく包丁を振り下ろし、強引にパンを押し切ろうとする。刃がフランスパンに当たるたび、まな板がカタカタと音を立てた。
そして、ついに――
「スゥーッ!」
エリシアの力が勝り、包丁がフランスパンを貫いた。
ようやくパンが切れた瞬間、エリシアは勝ち誇ったように微笑んだ。
しかし、勢い余って包丁が机まで到達し、その衝撃で机の足がバキッと音を立てて折れてしまった。
机は一気に傾き、切ったフランスパンが転がり落ちた。
「切れましたわ…でも、ちょっとやりすぎましたわね。」
エリシアは満足そうにパンを見つめながら、傾いた机にため息をついた。スタジオは再び静まり返り、エリシアは冷静さを取り戻そうとするかのように軽く咳払いをした。
エリシアは、傾いた机の上に再び姿勢を正し、明るく宣伝を再開した。
「さあ、皆様!この切れ味鋭い包丁、なんと10,000円!お値打ちですわ!」
エリシアは自信満々に包丁を掲げ、微笑んだ。
「そして、今ならなんと、このスペ〜シャル〜なキッチンバサミもついてきますのよ!」
彼女はキッチンバサミを手に取り、次のデモンストレーションの準備に入った。目の前にはカニが置かれ、エリシアはその甲羅を切ろうと意気込む。
「いいですか〜?力は入りませんわよ〜そのままスッと……」
彼女はハサミを甲羅に当て、軽く切り始める。
しかし、思ったよりも甲羅が硬く、ハサミが動かない。
「スッと……ふん!」
少しずつ力を入れてみるものの、甲羅はびくともしない。
エリシアの眉が少しずつ険しくなり、ついに彼女の忍耐が限界に達した。
「オラアッ!」
エリシアが思い切り力を入れてハサミを閉じると、カニの甲羅が勢いよくハサミからすっぽ抜けた。
その瞬間、甲羅は弾き飛ばされ、スタジオにいたアシスタントのメガネに直撃。
パシッ!
アシスタントのメガネが外れ、床に落ちる音がスタジオに響く。驚いたアシスタントは目を見開き、メガネを拾おうと慌ててしゃがみ込む。
エリシアは一瞬の沈黙の後、何事もなかったかのように優雅に笑顔を浮かべた。
「ええっと…このキッチンバサミ、使い方次第でとても便利ですわ。皆様もぜひお試しくださいませ!」
エリシアは気を取り直し、さらに明るい声で続けた。
「それだけじゃないんですの!今ならなんと、この『肉叩き』もついてきますわ!」
彼女は手に取った肉叩きを見せびらかしながら、目の前に置かれた牛肉を叩こうと準備する。そして、力強く肉叩きを振り下ろした瞬間――
バキッ!
肉叩きの先端が突然飛んでいった。エリシアは一瞬だけ動きを止めるが、すぐに平然とした顔でポーズを決めた。
どこからともなく「いてっ!」という声が聞こえてくるが、エリシアは何事もなかったかのように無視し、番組はそのまま進行する。
「とにかく、このセットは今がチャンスですわ!皆様、お見逃しなく!」
エリシアは笑顔で視聴者に向かって手を振り、番組の締めくくりに入った。
「さて、皆様!この素晴らしい商品セットを手に入れるには、こちらのフリーダイヤルまでお電話をどうぞ!」
彼女は得意げに番号を掲げた。
「フリーダイヤルは『1241(エリシア)』ですわ!これなら覚えやすいでしょう?」
しかし、視聴者にとってはその語呂合わせが全く理解できないものだったが、エリシアは満面の笑みを浮かべたまま、優雅に頭を下げて番組を締めくくった。
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