・独身最後の晩餐

「独身生活、最後の晩餐に乾杯」


「乾杯」


 二人でグラスを合わせる。ビールを飲むと美味い喉越しを感じた。


「お前が結婚するとはな」


「俺も結婚するとは思わなかったぜ。お前のおかげだよ」


「ははは。お前が魅力的な男だったからだぜ」


 焼き鳥に齧り付くとタレがたっぷりで美味い。俺はニヤニヤと笑っている。


「相手さんも美人だし、最高だな」


「本当にな。俺を好きになってくれてよかったよ」


 刺身を醤油に付けて口に放り込むコリコリして美味い。また俺はニヤニヤと笑う。


「相手さんに飽きられたら俺が貰ってやるよ」


「おいおい、もう酔ったのか? それに、俺は彼女一筋」


「おおう、惚気だね」


 卵焼きに箸をつけると少ししょっぱい。俺はニヤニヤと笑えている。

 それからしばらく経って、解散の時間になった。


「この卵焼き食べて、ビールも全部飲んだら俺も店を出るよ」


「悪い。彼女が待っているからな」


 振り返らずに店を出て行く。その様子を見送った。


「……最後の晩餐に、乾杯」


 最後のビールは、とても苦い。俺はもう笑えなかった。

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