第5話 華宮姫

着替えを済ませた瑶は殿下と共に宮殿へ

向かっていた。殿下が側室を連れて宮殿に

来ることが無かったため、皆が2人を見ている。

女官達はそれぞれの側室の所へ行き

見たままを伝える。


「あらそう、あの殿下が。珍しいことも

 あるのね。私も興味があるわ、明日

 お茶会を開きましょう。他の側室達の

 反応も気になるし」


華宮姫は落ち着いた様子で女官の話を

聞いていたが、内心穏やかではなかった。

表向きは穏やかな後宮も裏は泥沼で醜い。

特に殿下には王位継承者がいないため、

男児を産めば皇太子妃になれると躍起に

なっている側室がいるからだ。


「まあ殿下は瑶才人にあの薬を使う訳が

 ないから、勝ち目なんてないけど。

 でも、必ず凛昭容りんしょうようは何か

 仕掛けるはず」


凛昭容は高2品の側室で、2番目に地位が高い。

華宮姫の前では大人しくしているが他の

側室からは嫌われている。自分より位の

低い側室をいじめ、楽しんでいるようだ。

父親が陛下の上位武官であるため、殿下は

廃妃に躊躇している。


「でももし瑶才人に手を出したら凛昭容を

 廃妃できるわ。そしたら後宮も安泰ね。

 ・・さてどう陥れようか」

 

華宮姫の高笑いだけが部屋中に響き

渡っていた。

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