第7話

(う~ん……まだいまいち慣れていないんだよね)


弥ノ助さんが自分のことを『じじぃ』と言うのにまだまだ慣れない。


確かに年齢的には70歳。中身は立派なおじいさんなのだろうけれど40代の忠司さんと面と向かって話をしている弥ノ助さんはどこからどう見ても忠司さんよりもうんと歳下に見える。


そう、弥ノ助さんは実年齢よりも若い容姿をしている。辛く見積もっても精々30代。下手をしたら私と同世代に見える風貌だ。


だから最初弥ノ助さんと出逢った時、私と同い歳くらいだという気持ちで接していた。


故に弥ノ助さんから結婚を前提にお付き合いしたいと言われた時も私は何の違和感もなくそれを受けてしまった。


しかし実際の年齢を訊いて私は驚いた。


たちの悪い冗談でからかわれているとしか思えなかった私に弥ノ助さんは免許証や保険証など公的な身分証明書を見せてくれた。


其処には紛れもなく70歳だと証明する生年月日が記載されていた。


それでも有り得ない現実に狼狽える私に弥ノ助さんは年齢にそぐわないその容姿の理由を語ってくれた。


勿論、その理由に関しても私はどこか信じられない気持ちがあったけれど……。


(結局は本能……なんだよね)


考えるよりも先に気持ちが大いに揺さぶられてしまった。


最終的には弥ノ助さんと結婚したい、添い遂げたいという気持ちが勝り今に至る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る