第5話
「それで? 若い奥さんをもらった果報者のご隠居は今日、何をしているの?」
「今日は老人会の集まりに行っていますよ」
「あらまぁ。じゃあ其処でもきっと里咲ちゃんとのことをからかわれているかもね」
「そう……でしょうか」
おじいちゃんおばあちゃんたちに囲まれてからかわれているかもしれない弥ノ助さんを想像したら少しだけ気持ちが沈んだ。
(私と結婚したことで弥ノ助さんが嫌な思いをしなければいいな)
前の時と比べられるのはちょっと嫌だな──なんて思いから少しだけ私から浮かれ気分を奪っていた。
私にとっては初めての結婚。でも弥ノ助さんにとっては三度目の結婚となる。
事情を知らない世間一般の人から見ればこの結婚は充分からかいのネタになるような結婚だろう。
幸い、昔からこの界隈に住む人たちは概ね弥ノ助さんの事情を知っているからか先刻の前田のおばあちゃんのようにこの結婚を悪く言う人はいない。
その点はよかったのかなと思うけれど、事情を知らない私たち世代には理解され難い結婚であることは確かだった。
かくいう私もほんの一年前まではまさか50も歳上の人と結婚することになるとは思わなかった。
そもそも弥ノ助さんが70歳というのも初めは信じられなくて随分戸惑ったものだった。
(いや、決して見た目だけで好きになった訳じゃないけれど)
不意に懐かしい記憶が呼び起こされてしばらく物思いに耽ってしまった。
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