第2話

季節は春──満開だった桜が散り始め所々葉桜になってしまっている頃。



チャリリン♪


「いらっしゃいませ」


お店のドアについている小さな鈴が鳴りお客さんが来たことを知らせた。


「こんにちは、里咲ちゃん」

「前田のおばあちゃん、こんにちは」


常連客のおばあちゃんを迎えて私は笑顔で接客する。そんな私の胸元を見ておばあちゃんが声を上げた。


「おやまぁ、里咲ちゃん、ようやっと結婚したのかね」

「あ…はい。昨日、私の誕生日だったので」

「そうかいそうかい…。いやはや……長かったねぇ」

「……」


感慨深げに表情を崩すおばあちゃんにつられて私までへらっと笑ってしまった。


そう、私は昨日20歳の誕生日を迎え、そして結婚した。


結婚といっても籍を入れただけの簡単なもの。でも胸元につけているネームプレートは旧姓から結婚相手の苗字に変わっていた。


前田のおばあちゃんはそれに気が付いてお祝いの言葉をいってくれた。


「式を挙げないなんてつまらないねぇ。里咲ちゃん、ウェディングドレス着たくないの?」

「まぁ……憧れはありましたけど、でも白無垢着て写真、撮ったんですよ」

「おやそうかね。それは見てみたいねぇ」

「写真、出来上がったらお見せしますね」

「そりゃひとつ愉しみが出来たよ」


気さくな前田のおばあちゃんはいつもと同じく豆大福と草餅、其々三つずつお買い上げして帰って行った。

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