カミングアウト
烏海香月
act1 僕の秘密。
第1話
僕には秘密がある。
秘密──というか、内緒というか。
大事な人には決して言えない恥ずかしい秘密が僕にはあった。
**********
「ねぇ
「え、いいの? ご両親に迷惑じゃ──」
「えっと……今日ね、うちの両親、旅行に行ってて……」
「…!」
分かり易い誘い文句。暗にアレを望んで誘っているんだって分かってしまう。
彼女にそんな風に誘われたら乗らない彼氏がいるのだろうか?
外は夕暮れから夜に変わろうとしていた。
立派な大きな二階建ての家の一室で僕たちは甘い時間を過ごしていた。
大好きな彼女との愉しいあれこれ。それはそれは至福の時間だった。
しかしそんなうっとりするような時間は瞬く間に過ぎて行き──……
「ねぇ、どうしても泊まってくれないの?」
「ごめんね、今夜はどうしても外せない用事があって」
「……美紗緒がこんなにお願いしても?」
「ごめん」
「………ちぇ」
小さく舌打ちをする仕草も可愛いなと思った。
「メールするから。ちゃんと戸締りしてね」
「うん、待ってるね」
軽くキスして彼女の家を出た。
いつまでも僕を見送って手を振る彼女が愛おしくて可愛いなと思った。
本音をいえば僕だって泊まりたかった。
というか、前もってこういう状況になると解かっていたら絶対に休んだのに!
「──ちぇ」
美紗緒の真似をして小さく舌打ちをした。
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