第21話
「……ご飯、食べよう」
仕方がなくノロノロと立ち上がり台所へ行き、炊飯器を開けごはんをよそった。そして鍋の中のみそ汁をお椀に入れた。
そしていざめざしを温めようとレンジの前に立ったけれど使い方が解らない。
お皿を中に入れて扉を閉めれば自動的に温めてくれるのかと思ったけれど、どうやらそうではないみたいだ。
「何よ、これ! こんなの全然便利じゃない!」
めざしを温めるのを早々に諦めそのまま食べることにした。
「いただきます」
手を合わせてひとりきりの食卓でご飯を頬張った。
「ん、甘い」
白いご飯は甘かった。何も乗っていないご飯が甘いだなんて知らなかった。
「ん、何これ。美味しい」
みそ汁を飲むと今まで飲んだことのない味がした。色が薄くてあえて表現するなら白い汁。中には何かの葉っぱと大根だけ。それなのに妙に美味しかった。
ご飯とみそ汁、交互に口に含むと今まで味わったことのない味覚が広がった。
そしてめざしを口に含む。
「うっ、何この魚! 硬いし苦い!」
めざしをひと口噛んだだけで食べるのを止めた。
「これ、人間の食べる物じゃないでしょう! 天眞の奴、またこんな意地悪をして!」
ご飯とみそ汁だけは美味しかった。だけどやっぱりすんなりいい気持ちだけにはしてくれなくて、こういった苛めみたいな事をするんだなと思ったらまた気持ちが沈んだ。
「……」
不意に天眞が読めと置いて行った本を横目で見た。だけどその大量に積まれた本を全く読む気にはなれずただため息しか出なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます