第20話
「それにめざしって何よ」
どうやらお皿に乗っている魚の事らしいが、こんな魚、今まで食べたことがなく戸惑った。
「っていうか朝ご飯、これだけなの?!」
私にとってはあり得ないメニューだ。ご飯と味噌汁と魚だけなんて。
「苛めだ、嫌がらせだ! 天眞の奴、私が嫌いだからこんな陰湿で意地悪いことをしているんだ!」
憤った気持ちからテーブルをドンッ! と叩いた。
(昨日のセックスだって私のことが嫌いで今までの鬱憤を晴らすためにわざとやったんだ!)
そう思うとなんだか泣けて来た。
一日にして性格が変わってしまった天眞に戸惑い、そして今までずっと慣れ親しんで来た優しい天眞は偽りのもので、昨日の天眞が本当の天眞なのだと知ってショックを受けた。
(ずっと騙されて来たんだ、私)
哀しい気持ちに心が支配され、しばらく何も考えられず俯いて座っていた。するといきなりグゥゥゥ~とお腹が鳴った。
「わっ! な、何よ、今の音」
それは空腹から来る私のお腹の音だった。
「そういえば私、昨日から何も食べていなかった」
ようやくそのことに気がつき、初めて感じた空腹に切ない気持ちになった。
(お腹なんて空いたこと、なかった)
今まではお腹が空く前に何かしら食べていた。食べるものは常にあったから食べられなくなるなんて考えたこともなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます