【読者参加型小説 毎日投稿】共鳴の罠――読者が暴く真実

湊 マチ

第1話 プロローグ

プロローグ:共鳴する影


夜の静寂を破るように、暗い部屋の中でスマートフォンが震えた。鳴り響くバイブレーションの音に、男は無表情のまま手を伸ばし、画面を確認した。


「ようこそ、共鳴の会へ。」


簡素なメッセージとともに、添付されたファイルには場所を示す座標が記されていた。男は短く息を吐き、スマートフォンを机の上に置くと、薄暗い部屋の隅に置かれたスーツケースを手に取った。そこには生活の痕跡をすべて消すかのように整理された荷物が詰め込まれている。


男の名は、川村達也。会社をリストラされ、家族との関係も崩壊し、孤独に耐えきれなくなっていた。誰にも必要とされないと感じていた彼に、このメッセージだけが最後の希望のように思えた。


「これで……変われるんだ。」


独り言のように呟き、達也はその座標に向かうべく家を出た。それが、彼の姿を見た最後の人間となる。


数日後、捜査一課の警部補・斉藤康隆は、川村達也の失踪届を受理していた。だが、同じような失踪事件はこれで3件目だった。共通点は何も見当たらず、警察内部でも捜査は難航していた。


「またかよ……。」


斉藤は失踪届を見つめながら、苛立ちを隠せなかった。どのケースも同じように、本人の自発的な失踪と思わせる形跡しか残されていない。強制的に拉致された形跡もなければ、事件性を示す証拠もない。ただ、「共鳴の会」という名前がどこかにちらついている。


「こんなの、どうやって解決すればいいんだ?」


溜息をついた斉藤は、ふと机の引き出しに手を伸ばした。そこには、名刺が一枚――「芹沢孝次郎 心理学者探偵」と書かれている。以前、別の事件で協力を仰いだときに受け取ったものだった。


「心理学……あいつなら、この手の事件に何か手掛かりを見つけられるかもしれない。」


斉藤は名刺を握りしめ、決意するように電話をかけた。


一方、芹沢孝次郎は――


都内にある小さな事務所で、次の依頼の資料を整理していた。事務所の窓からは午後の日差しが差し込み、机の上に置かれたファイルを照らしている。そんな中、電話が鳴った。


「もしもし、芹沢さんか?」


受話器の向こうから聞こえる斉藤の声に、芹沢は懐かしさを覚えながら答えた。


「斉藤さん。久しぶりですね。どうかしましたか?」


「実はな、また厄介な事件に巻き込まれてる。連続失踪事件だ。『共鳴の会』って名前に心当たりはないか?」


芹沢は眉をひそめ、手元のペンをくるくると回しながら考え込んだ。


「共鳴の会……名前だけなら耳にしたことがあります。孤独や不安を抱える人々を対象にした団体ですね。ただ、それが失踪事件とどう関係しているのか。」


斉藤は疲れた声で続けた。


「証拠らしい証拠は何もない。ただ、失踪者の自宅には必ず『迎えに行く』と書かれたメモが残されてるんだ。それ以外は手掛かりゼロだ。」


「『迎えに行く』……心理的な誘導の可能性がありますね。相手が自ら行動を起こすよう仕向ける手口です。これは、調べてみる価値がありそうですね。」


芹沢はすぐに引き受ける旨を伝え、事件の詳細を聞き出し始めた。斉藤が語る内容には、何か不自然で、計画的な意図を感じさせるものがあった。


物語の序章は、こうして始まる――


芹沢は事件の背後に潜む「共鳴の会」の存在に迫るため、失踪者たちの共通点を探り始める。しかし、その過程で浮かび上がるのは、心理学を悪用したカルト的な組織の姿だった。彼らは巧妙に隠された洗脳技術を駆使し、人々を精神的に支配していた。


これは、心理学者としての芹沢の信念を試す物語。

そして、読者に「真実を見抜く目」が問われるミステリーの始まりである。


読者への挑戦


あなたなら、失踪者たちが辿った道を見つけ出せるだろうか?

物語の中で明かされる手掛かりを元に、失踪事件の背後に潜む真実を暴いてほしい――すべての答えは、あなたの中にある。

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