第14話 凍道チャンネル「太平記後醍醐天皇作者論③」
①南朝(後醍醐天皇側)に寄り添って書かれている。
②やたらと中国の文献が引用される
③まず21巻、後醍醐天皇が崩御するあたりまでが書かれ、その後南朝が吸収される40巻まで書かれたと言われている
④第二次大戦前、太平記をモデルに楠木正成公が忠臣筆頭とされて激推しされていた
「はい、じゃ③ね。これは実際に読んでもらったらわかるんだけど、21巻の後醍醐天皇が崩御するシーン。だんだん脈が弱くなってきた後醍醐天皇がこう言い残す。「妻子も宝物も王位も死後の世界には持って行けぬ、しかし私は妄執として、朝敵を滅ぼして日本に太平をもたらしたいという願いだけだ。私の死後は天下の戦乱を義良親王とともに鎮めよ。我が命に従わぬものは天皇といえども皇位継承の資格なし」と言いながら死ぬ。まあ事前に言い残したんでしょうけど、これタイトル回収ってやつだよね。最終回で後醍醐天皇が太平の願いを・・・って言ったところでタイトルコールドーン『太平記』でOP流れるやつ。でそのあと1話で太平記の22~40巻を駆け足でいく。結局南朝は足利義詮の差配で北朝に吸収されました、って」
『人の心とか無いんか』『駆け足すぎワロタ』
「太平記はそんな南北朝時代を終わらせる筋道をつけた義詮の死のあたりでおわるんだけど、義詮の死がちょっと違和感あるんだよね。認知プロファイリングしてみよう。「義詮が体調を崩し、様々な治療も霊薬も効果がなかった。釈迦が入滅した際もそうだが、宿命の病気を治すことなどできない。人間が逆らえない道理である」って、病気は天命だみたいなこと言ってるわけ。他に、毒殺されたのだろうと書かれてる足利直義は皇子2人と同じ毒で死んだと書かれてるが、史実とは死んだ年が違うので正確ではない。病死のときは悪化していく様まで記されている。これ、病気の知識が相当あるか…病死に関してなにか認知がおかしい。病死させる?そんなことがこの時代にできるんだろうか」
『バイオのだ』『濃厚接触すれば伝染せるのだ』
「尊氏の死に関して、『戦場では敵なしだったが病気を防ぐ兵はいなかった』と言ってる。尊氏の死のときは、まるで防ぐ方法があれば病気が防げたみたいに書いてる。でも、義詮と後醍醐天皇のときは、病気とは逃れ得ぬものだと、運命の死だと書いてある。つまり、認知として、尊氏については意図的に病死させた。義詮と後醍醐天皇については意図せず病に倒れたんじゃないか?」
『どゆこと?』『毒ならまだしも病死なんてつくれないのだ』
「でもこのあとの足利義満もどうみてもおかしい死に方してるじゃないか!皇位簒奪に手が届きそうになった翌々日に倒れて死亡だよ?こんなの作為的だとしか思えない。誰かが病気を操れたんじゃないか?そして、その誰かとは、後村上天皇のような南朝の天皇じゃないか?だから、朝敵を病気にさせて葬った南朝こそが、正統な天皇として扱われてるんじゃないのか?んん?南朝が吸収されるまで正統性としたのは三種の神器……三種の神器を持つほうが正統として扱われた…三種の神器とは病気を操る何らかの道具……たとえば病気を操る技術書であるとか……」
『さすがにないない』『宝具なのだ』
「『天皇の正統性が三種の神器であるならば、では隕石が直撃して三種の神器が失われたら天皇家は潰えるのか』なんて議論はされたが、答えはない。いや、流石に荒唐無稽か。でも、太平記の認知だと『尊氏は防げたけど病気で死んだ』『後醍醐天皇と義詮は逃れられない天命の病気で死んだ』とあるように読めるんだ。そして、義満も不自然な病気で死んだから毒殺されたとしか思えない。毒殺……たとえば病気に見せかけて毒殺できる秘伝の毒レシピが三種の神器の正体とかどうだ?ほら、三つ目がとおるで、吉野の酒船石で調合した薬みたいに」
『不敬罪にもほどがあるのだw』『三種の神器はライトセイバーとラーの鏡とタマタマですん』
「天皇といえば祟り、崇徳天皇がそうだし、藤原四兄弟も長屋王の祟りで全滅したと言われる。でも、祟りって信じさせるために必要な条件ってなんだと思う?俺は「予言すること」だと思うんだ。誰かが死んだあとで、祟りじゃー!とか言ってもあんまり祟りという概念は定着しないけど、「長屋王を死に追いやったあいつらにはきっと祟りが」と噂をながしておけば、実際に四人が病気で死ぬと民衆は祟りを恐れるだろう。これは、病死を予言できる必要があるわけだが、もし病気に見せかけて毒殺できるなら、予言することは容易い。予言してから毒を盛ればいい」
『自演のだ』『でも藤原四兄弟は天然痘のだ』
「ん、そうか、藤原四天王の死因は天然痘だからこの時代はどうしようもない伝染病か。天然痘と同じ症状になる毒薬なんて現代でも無いだろうし、あったとしたらそれは天然痘菌そのものだけど、菌の発見は顕微鏡の発明までないわけだからね」
『のだ』『天然痘テロ怖いのだ』
「そうだね、天然痘は根絶された最強の伝染病の一つだから、もし今また天然痘菌が広められたら、恐ろしい死者が出ると言われてる、最悪レベルのバイオテロだからね。牛の種痘から始まって、天然痘はワクチンで根絶された最初の病気でもあるんだけど。そういえば面白い話があってね、天然痘って牛の種痘で根絶されたって言われてるじゃん?でもあれ、最近の研究で実は天然痘って馬のウィルスだったんだよね。馬の天然痘が牛に伝染って弱毒化した種痘で人類は天然痘を克服できたってわけ」
『牛×馬?』『知らなかったのだ』
「ってことは天然痘ってもともとは馬が持ってた病気かもしれないね。馬といえば、そういえば藤原四兄弟の父である藤原不比等が編纂させた日本書紀って、古事記のあと数年後に完成したわけだけど、馬に関する記述が古事記と日本書紀で違うんだよね……あっ!!!」
『急におっきい声びっくりするのだ』『あっ?』
「ちょっと今すぐ確認したいから今日はここまで!次回の凍道チャンネルは古事記と日本書紀の違いについてやろうと思います。んじゃおついて~」
『急なのだ』『おついて~』
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