仔柴犬ユメと夢の箱

第一話『箱入りの仔犬』

 曇天どんてんの夕刻。


 油濃いガス臭を放つアスファルトの道路脇どうろわき

 上面じょうめんのない、小ぶりな段ボール箱があった。

 中には、捨てられた一匹の仔犬こいぬ

 恐らく、つい最近生まれたであろう、仔犬。

 そこへ、革靴のやや硬い足音。

 中年の男が、箱を見ながら歩いてくる。

 男が箱の前で立ち止まりしゃがみ込む。

 箱が隠れて見えなくなる。

 男の背は、動かない。

 男は立ち上がり、去る。

 箱は消えていた。

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