第7話「ギルド長の提案」



「へぇ、これが噂の魔力料理ですか」


ヴァイスギルド長は、目の前に並ぶ料理をじっくりと観察している。虹色に輝くスープ、ふわふわと浮かぶキノコのソテー、そして魔力を閉じ込めた野菜のグラッセ。


「まるで料理が踊っているようですね」

ギルド長が言うや否や、キノコが本当にクルクルと回り始めた。


「あ、すみません!」一郎が慌てて取り押さえようとする。「魔力の調整が...」


「いえいえ」ギルド長は楽しそうに笑う。「素晴らしい演出じゃありませんか」


緊張していた店内の空気が、少しずつ和らぐ。


「では、いただきま...くしゅん!」


なんと、ギルド長までもが魔力くしゃみ。エマの虹に触発されたのか、金色の光の粒子が舞い散る。


「あら」ギルド長は照れたように髭を撫でる。「これは失礼。私も若い頃は魔力くしゃみには悩まされましてね」


「えっ!」エマが目を輝かせる。「ギルド長さんも!?」


「そうそう。料理に魔力を込めすぎると、よくくしゃみが...」


話しながらスープを一口。


ギルド長の表情が変わる。


「これは...」


店主、一郎、エマは固唾を飲んで見守る。


「実に...面白い」


予想外の言葉に、三人は目を丸くする。


「料理に魔力を込めること自体は、古くから行われてきました」ギルド長は続ける。「しかし、このように魔力と味の相乗効果を生み出すとは...」


「あの」一郎が恐る恐る口を開く。「違反には当たるのでしょうか?」


「ええ、れっきとした違反です」


店内の空気が凍る。


「ですが」ギルド長はニヤリと笑う。「新しい可能性を潰すのは、もっと大きな違反だと思いませんか?」


「それは...」


「一つ提案があります」ギルド長は立ち上がった。「ギルドの特別研究部門として、この店の魔力料理を研究してみませんか?」


「えっ!?」三人が同時に声を上げる。


「もちろん、お嬢さんの魔力くしゃみも研究対象です」


「私の...くしゅん!」


エマの虹がギルド長の髭に絡まり、一瞬だけ七色に輝く。


「ほら」ギルド長は愉快そうに笑う。「これも立派な研究材料ですよ」


その時、外から歓声が。


「おお!ギルド長の髭が虹色に!」

「これは縁起物だ!」

「写真に収めたい!」


行列の客たちが騒ぎ出す。


「あ、これは...」ギルド長が慌てる番だ。


「大丈夫です」一郎が救いの手を。「すぐに新メニューの『虹色ヒゲ揚げ』を考案しましょう」


「な、なんですとっ!?」


全員が笑いながら、これが新しい一歩になることを感じていた。


食材が踊り、虹が舞い、髭が輝く。そんな不思議な料理店の物語は、まだ始まったばかり。


エマはくしゃみをしながら、未来に思いを馳せる。


「くしゅん!」


今日の虹は、いつもより少し大きな輪を描いていた。

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