第3話 死の向こう側

家に帰ったが母は変わらなかった。

むしろ酷くなっていた。


「あんたのせいで捕まった。」

「産まなきゃ良かった」

「じゃま」

「学校なんか行かせない。」



学校に行かせて貰えなくなった。


さらには、部屋の中で手足を縛られて食事も与えられなくなってどんどん力がなくなって行った。


何度も何度も児童相談所が訪問しに来ていたが『また来た。鬱陶しい。』と居留守を使っていた。


でも僕は、母が自室で寝ているある日の夜中、

一瞬の隙を見て家を出た。


たまたま階段なしのアパート一階部分。


お尻をずったまま家を出て3軒隣のマリアの家。


前に玄関の鉢の下に家の合鍵を隠した。

あればラッキー。無ければ他の方法を短時間で考えなければいけない。



一縷いちるの望みをかけて後ろ手で探すと……あった!


晴太は鍵穴を探りながら鍵を入れて……開いた。



家の中に入ると、


「ママ!!マリア!!」と叫んだ。


数秒で階段をかけおりる音がして晴太を抱きしめてくれたのはマリアだった。


「…おかえり。」

「逃げてきた。」


「ママ!!ママ!!」


「…なに。」

「晴太!!助けて!」


「!!…ちょっと待ってて。…あっ、マリア、鍵閉めて。」

「大丈夫。晴太が閉めた。」

「…さすが!」


マリアの母はハサミを持ってきて晴太の手足の固く縛った紐を切った。


晴太は自由を取り戻して母に抱き着いた。


「晴ちゃん…」


母は泣いていた。



「晴太、服脱いで。」


マリアに脱がされると、やはり新しい痣が沢山増えていて、タバコのあと、まだ新しい火傷の跡まで付いていた。


それを見て母は言った。


「マリア、晴太とママとマリアの3人で遠くに行くとしたらマリア着いてくる?」

「行かないわけない。」



マリアの母は直ぐに通報した。

その後晴太の母はまた逮捕された。






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