第6話 異世界_エルフの世界2
「食事は、野菜のみか……。せめて、豆が欲しいな」
草食動物かよと、突っ込みを入れたくなるくらいの食事だった。
煮込み野菜のスープ。
炭水化物がない。芋すら入っていない。タンパク質もどうしようか。
(生物として、体の構造が違うんだろうな)
ホモサピエンスって、貝だけを食べていた時期があるとか聞いたことがある。氷河期にその種族だけが生き残ったとも。
人類のボトルネックの話だ。
可能性として、エルフ族は体内にアミノ酸を生成する微生物を飼っているのかもしれない。
草食動物よりの人類なのかもしれないな。
パンダが近いかもしれないな。本来肉食の熊が、一部地位で笹を食べて生きているんだし。人間が、体内に微生物を飼えたら、こんな食生活になるのかもしれないな。
進化の可能性の話になって来る。体内にアミノ酸を生成する微生物を飼っている人類──それがエルフ?
ありえるのか?
「
「わふ?」
子犬を見る。美味しそうに、煮込み野菜のスープを食べているよ。
「お前も不思議な存在なんだよな。本来、肉食のはずだろう? それに、お前がいるから、俺はエルフ族に助けて貰えたみたいだし。何が起きているんだか」
子犬は、俺の話を理解できないみたいだ。食事に戻っている。
俺は、とりあえずスープを飲み干した。
それと、少し色の付いた飲み物だ。エルフ族のジュースになるのかな? 若干、青みがかってる。
味は……、美味しくない。
最後に、林檎っぽい果物を口にする。
──シャリ……もぐもぐ。
酸味と甘みが美味しいかもしれない。だけど、食べたことない果物だった。
「わんわん!」
子犬も食べたいみたいだ。だけど、刃物なんてない。俺の装備だった、短銃と短剣も取り上げられたみたいだ。
林檎を割る方法……。
俺は、ヘタの部分に親指を添えた。力を入れてみる。
──パカ
林檎が割れた……。芯の部分が柔らかい果物だったのかもしれない。
半分を子犬に与えて、俺は残りを食べる。
「……体の内側から力が湧いている。間違いじゃないみたいだ」
体の何かがおかしい。だけど、右ひざの怪我があるので、立ち上がれない。
確認したいけど、怪我を癒すのが先決だな。
ここで、エルフの女性が入って来た。
俺の右手に触れる。
「全部食べましたね? 体の調子はいかがですか?」
「タンパク質が欲しいです」
エルフの女性が笑った。
そして、俺の右手の包帯を解いて行く。
「怪我が消えている?」
傷跡は残っている。かさぶたも付いているけど、洗ったら剥がれそうだ。
ふと、右足を動かしてみる。
右ひざの靭帯を損傷したと思ったけど、痛みがない?
「果物は、美味しかったですか? 分からないみたいなので、貴方の世界では、もう採れない果物のようですね。
果物? 林檎のことか? 俺は、何を食べたんだ?
その後、部屋から出してもらった。
体中何処も痛みがなかった。怪我が全快しているよ。
それだけじゃない、体が軽い。筋肉も増えた気がする。『寝て起きたら、強くなってた』って言葉が頭をよぎる。
それと鏡を見と、俺の顔の血色がよくなっていた。
(本当に俺は、何を食べたんだ? 怖くて聞けないよ)
◇
部屋の外は、壮大な森林だった。樹齢千年を超える大樹が乱立しているよ。どんな樹木だよ。
エルフ族は樹と樹の間に橋をかけて、移動している。
ホモサピエンスは、昔は洞窟に住んでいたらしいけど、エルフ族は、木の上で生活する種族だったのかもしれない。
観察しながら、歩いていると視線を感じる。
(歓迎はされていないみたいだけど、何かありそうだな)
仕事でも依頼されそうだ。
でないと、この待遇は説明できない。
「大丈夫ですよ。暴れない限りは、危害を加えませんから」
エルフの女性を見る。
「名前を教えて貰えますか?」
「エマと呼んでください」
エマさんは、身長165センチメートルってとこかな? 俺が、170センチメートルなので若干低い程度だ。
尖った耳と、宝石みたいな眼がエルフの特徴だ。体の基本構造は、ホモサピエンスと一緒だけど、パーツが違うって感じだな。白い肌と金髪は、外国人を連想させる。見慣れない俺は、若干の恐怖を感じてしまう。それは、相手も同じだろう。
服装は、布と革を組み合わせている。
それと、アクセサリーを身につけていた。彫金技術が見て取れる。手作業の一点物みたいだ。これだけで、大体の文化水準を推測する。
その後、豪華なツリーハウスに案内された。樹の幹をくり抜いた部屋だな。
壁は、強度的に大丈夫なんだろうか? 樹の枝が折れないか心配になるけど、大丈夫なんだろう。
中に入ると、数人のエルフがいた。
「何かありますか? 挨拶?」
「ご想像通り、お願いしたいことがあります」
どうやら、仕事の依頼のようだ。
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