俺だけダンジョンを閉じられる件~魔力と闘気の世界で、俺は霊力を駆使します~
信仙夜祭
第1話 プロローグ
明日から夏休みだ。
期末テストは、全て赤点回避。まあ、頑張った方かな。
ここで肩を叩かれた。
「
俺の名前は、
振り向くと、男女2人が心配そうに聞いてきてくれた。
俺の幼馴染でもある。学校で浮いている俺に気軽に話しかけてくれる、貴重な存在だ。
「赤点は全て回避したよ。夏休みは、出席なしに決まった。緊急呼び出し以外は、のんびりできそうだよ。バイトでもしようかな」
2人の表情が明るくなる。
「本当に? 実技は、大丈夫だったの?」
「俺は、銃がメインだからね。命中率だけはいいんだ。威力がないから
この2人とは、実力がかけ離れていて、出席している授業が違う。つうか校舎が違う。
まあ、優等生と劣等生に分かれたけど、友人として付き合ってくれるいい奴等だ。親友と呼べる。
「そうか……。俺たちは、国からの要請で
「ああ、連絡をくれれば、俺の方で合わせるよ」
「うふふ。カラオケの練習はしておいてね~。花火も捨てがたいな~。私の浴衣姿見たいでしょう?」
モデルのポージングをする幼馴染。ハルカは、スタイルが良いから目立つんだよな。
俺がため息を吐くと、ジト目で見て来た。
周囲がざわついて来たので、ここで解散にさせてもらった。
まあ、俺たちの関係を知っている奴らは多い。俺が拗ねずに2人と気軽に話せば、2人の株が上がる。
腐りたい気持ちもあるけど、迷惑はかけられなかった。
それと、俺がいじめられない理由でもある。
前に嫌がらせして来た奴は、ハルカがボコボコにして退学に追い込んでいる。情けないけど、守ってもらっているんだ。
まあ、クラスでは孤立しているけどね。もう慣れていた。
「悪いけど、これから測定があるんだ。後で連絡するよ」
「ああ」「またね」
◇
「君は、〈魔力〉と〈闘気〉が増えないね~。後天的に増える人もいるんだけどな……」
教師から、落胆した声で言われる。
何かの装置で、良く分からない力を測定された。最も期待されていない俺は、最終日に回されたみたいだ。
まあ、最近人類が手に入れた、未知の生命エネルギーなんだけど。
それと、同時に世界中で問題も発生していた。それが、
この学校は、
俺は、最下級のEランクだ。もう高校2年生だけど、一年半頑張っても最も重要なステータスに変化がなかった。
正直、俺は戦力外だ。
だけど、普通の人よりは優れている。
〈魔力〉と〈闘気〉は、
〈魔力〉が高い人は、魔法使いとか魔導師と呼ばれる。火風土水などの属性魔法を操る職業だな。最上位の使い手だと、環境を変えてしまうらしい。台風を作ったとか聞いたことがある。空間を操れるなんて話も聞く。
〈闘気〉が高い人は、肉体強化だ。戦士、武闘家、聖騎士……。武器によって呼び名が変わる。チーターより速く走れる人や、虎を素手で倒せる人なんかもいる。〈闘気〉を武器として生成すれば、剣も要らなくなる。
最近はシステム化されて、銃弾も作れる。爆発力と鉛程度の硬度を〈闘気〉で自動生成しれくれれば、弾数を気にしなくても良くなるんだ。
どちらも体の内側から湧いて来る、未解明のエネルギーなんだとか。誰しもが持っている訳ではないらしい。
こんな人たちを野放しにもできないので、国策というか世界的に優遇している。監視が近いかもしれないな。
俺はというと、一人分の飲み水(500mL)を作るのが限界だったり、力士の突進をギリギリ受け止められる程度だ。何も持たないアスリートと同程度ってとこかな。
下級
ちょっと強い一般人程度だし。正直、武装した兵士の方が強い。
(昔は頑張ったんだけど、成長しなかった俺は、勉強を頑張んないとな。就ける仕事が限られちゃうし。幼馴染に心配されたくもない。そして、親にも心配をかけている)
退学させられない程度の成績で高校を卒業して、就職を目指している。
これでも一般人よりは、アドバンテージがあるんだし、実務の仕事であれば有利に立てると思う。
低い志だけど、現実主義者の俺にはあっていると思っている。
「おい、御影……。ツラ貸せよ」
背後から声をかけられた、またこいつらか。
「悪いが、時間ないんだ。休み明けにしてくれ」
俺が返事すると、いきなり殴って来た。女子生徒の悲鳴が響く。教師が駆け付けるまで、数分ってところかな……。
俺は小学生の頃、上級生に絡まれたことがる。『適正者』として、公園で実験していたら絡まれた。そして、暴行を受け……〈魔力〉が暴走してしまった。雷を落としてしまったんだ。かなり弱い雷だったけど、人体にダメージを与えるには十分な威力だった。
視力を失った者、聴力を失った者、右手の神経が焼き切れた者、脊髄にダメージを受けた者……。上級生には、後遺症が残ってしまった。
裁判にまで発展したけど、俺は無抵抗で暴行を受けていたので、裁判には勝てた。
だけど、今度は親への嫌がらせが始まる。
(抵抗しないのが、正解だけど気が滅入るな)
ガードしながら暴力を受ける。そして、教師が来た。俺に絡んで来た奴等は、逃げるけど教師の実力は、そんなに甘くない。
全員、瞬時に行動不能にされる。目に見えないスピードで、意識を刈り取ったみたいだ。
『適正者』の教師を舐めちゃダメだよね。
「御影……。こいつらは庇いきれないので退学にさせる。だけど、お前も話し合いに応じた方がいいんじゃないか?」
「障害は、回復しませんからね。何度頭を下げても嫌がらせが続いていますし。もう関係修復なんて不可能ですよ」
こいつらは、大企業の社員の子息だ。点数稼ぎで退学なんだろうな。まあ、『適正者』なんだし、職は見つかる算段なんだろう。
◇
学校が終わったら、直帰だ。
両親は、共働きなので炊事洗濯は、俺の仕事でもある。学校の関係でバイトができないので、家のことはできるだけ手伝うことにしていた。
父親が保証人になった会社が、夜逃げしてしまい、借金を返済している。肩代わりだな。俺が原因で嵌められた可能性も捨てきれないし。
両親を怨むことはないけど、人が良すぎるとは思っている。兄弟はいない。三人で慎ましく生活を送っていた。
「俺も働かないといけないな……」
大学は行けそうにない。専門学校も時間の無駄かもしれない。就きたい仕事がないからだ。
(わずかでも〈魔力〉と〈闘気〉を持っているんだ。普通の人よりは、アドバンテージがある。実務系の仕事で人と関わらない仕事って何があるかな……。いや、土木関係の肉体労働でも稼げそうかな)
考えていると、スーパーに着いた。
買うモノは、特売品が主だ。節約しないとね。食材と値段を見てカゴに入れて行く。
「きゃー」
食材を選んでいたんだけど、外から悲鳴が聞こえた。荷物を置いて外へ駆け出る。
「……
採算の合わない、低レベルダンジョンの場合だ。本当に何も資源が出ない。
バリケードを作って、たまに出て来る
ネズミの
(学生の俺に義務はないんだけど、放置もできないよな……)
俺の通う学校は、
それと、人を傷つけた場合は、ペナルティが発生する。Eランクの俺は、見て見ぬ振りが正しいのかもしれないけど、目の前で犠牲者を出したくなかった。
俺は、短銃を抜いた。
形は自衛隊の装備である、『SIG SAUER P220』を模しているけど、マガジンはない。〈魔力〉と〈闘気〉を弾の代わりに発射する適正者用武器だ。まあ、規格化されている武器の中で俺が唯一扱えるモノなんだけどね。俺はカスタム武器を作って貰えていない。
〈魔力〉を充填する……。一発撃つのに2秒はかかる。俺は実戦向きじゃないんだよな。
──パン、パリパリ
「キィキィキィ…」
雷系の弾丸を生成した。形は散弾だ。細かく分れた弾が放射状に発射されて、ネズミを襲う。一発でも当たれば、短時間だけど〈
だけど、
──ドスン
鳩尾に突進されたけど、左腕で防御した。角があったら死んでいたかもしれない。その後、壁や天井を使った四方八方から攻撃を受ける。俺は、急所を防御しつつ、隙を伺った。
そして、尻尾を掴み地面に叩きつけた。
「ぎゅるるぅ……」
こいつは、雷の弾丸よりも物理の方が効くらしい。尻尾は離さない。尻尾を握りつつ、片足で、
次は〈闘気〉を充填しながら、
狙いを定める。
──パン
頭を撃ち抜いた……。
「「「おおお!」」」
歓声と拍手が起きる。街中で目立ってしまったな。ここで、次にすることはマニュアル化されている。
「怪我人はいませんか? いる場合は、救急車を呼んでください。それと応急手当を」
確認したら、俺だけだった。
「流石、
つうか、
少し待つと、警備会社が来た。俺の制服を見た警備会社社員が近寄って来たよ。
詳細を説明する。
「ありがとう、助かったよ。
高校のOBに当たる人だと思う。少し聞いてみるか。
「低級の
「去年、
ため息しか出ないよ。
一定期間放置すると、
そして、数を減らした
国を滅ぼした
俺みたいな中途半端な戦力が、一番使えないんだよね。
俺は、汚れた制服の埃をはたいて、スーパーに戻った。ちなみに買い物は、無料にしてくれました。
◇
買い物が終わり、家に着いた。祖父から受け継いだ一戸建てだ。
両親は、借金が嵩んでもこの家だけは手放さなかった。俺も、引き継ぎたいと思っている。
築80年の家だけど、リフォームを繰り返しているので、まだ住める。
土台と柱が丈夫なんだろう。
──トントン
手を洗い、料理を始める。
包丁も慣れたもんだ。
タマネギのみじん切りも苦にならない。マスクすればいいんだと教えて貰った。
「ただいま」
「お帰り」
母親が帰って来た。スーパーで働いている。始めはパートだったけど、評価されて今は正社員なんだそうだ。
それと、賞味期限切れの食材を貰って来てくれた。もしくは、格安で買っているのかもしれない。それを受け取り、冷蔵庫に仕舞う。
母親が、ダイニングテーブルに突っ伏して休み出した。肉体労働だし、疲れているんだろう。
「今日はハンバーグ? いい匂いね」
「もう食べる? ご飯も炊きあがってるよ」
「お父さんを待ちましょう。夜勤を頑張って貰わないといけないし」
暫くして、父親が帰って来た。
貧しいけど、問題など起きない生活。
この時は、幸せだと思っていた。
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