~司春(ししゅん)~『夢時代』より冒頭抜粋
天川裕司
~司春(ししゅん)~『夢時代』より冒頭抜粋
~司春(ししゅん)~
日頃の人より発する猛暑を凌いで宙へと靡き、口を尖らす俺の幻想(ゆめ)には人が集まる囲いが見付かり熱気が灯され、てくてく独歩(ある)いた俺の宴は人を擁して得意に成り活き、晴嵐(あらし)の初めに憶えた孤踏(ダンス)を、想いの澄むまで堪能して居た。初秋(あき)の陽(ひ)などが燦々照り付く清(すが)しい景色が満載していた。何処(どこ)まで続くか気取れぬ坂道(みち)にて、俺の心身(からだ)は具体を欲して散策して居り、そのまま独歩(ある)いた俺の記憶は何時(いつ)しか観(み)ていた自分の在り処を山へと放(ほう)って得意気に在る。空気の中から人が出て来て熱気を認(したた)め、俺へと対した自体(からだ)の底から余力を発して朗らに映る。人の自体(からだ)は俺から透って幸先掴めず、俺の記憶は感覚(いしき)を片手に浮遊して居た自分の主観(あるじ)を上手く仕留めて静かに鳴りつつ、自分の行くべき執着地等にほんわり置かれた自分の糧など、ゆっくり探して確認して行く柔い気迫を大事にしていた。自分の得意を自分で否めて彷徨するのは、新たな施策を器用に見付けてそれを大事に活用して行く未熟な文士に視点を向ければ、当りの向かない稀有な事象へほとぼり冷め行き、文士の卵は自体(おのれ)を見捨てて空気(もぬけ)に駆られた淡い残骸(むくろ)をここぞとばかりに着用して行く哀れな行為を被(こうむ)るのである。何を文句に楽(がく)を付け活き自体(おのれ)の歩先(ほさき)を射止めて行くのか、全く知り得ぬ悔やみの内にて居眠りし始め、硝子に透った浮世の蓮葉(はすは)を女性(おんな)に宛がい憤悶(ふんもん)している。これまで観て来た柔い女性(おんな)の気配が仕上がり俺を包(くる)んで、これから始まる見知らぬ〝宴〟の細かい準備を精神(こころ)に温存(あたた)め、自分の感覚(いしき)がでっぷり肥った哀れな残骸(から)から抜け出し生(ゆ)くのを、然(しっか)と射止めた自分の〝両手〟に準え観ている。〝山(やま)〟と言うのは俺の感覚(いしき)に充分透った外形(かたち)に有り付き、小鳥が騒いで陽(よう)を帰(き)すなど、矛盾の豊庫(ほうこ)に遮り始めた俺へ対する幻覚にも在り、俺が精神(こころ)を射止めて落ち着き、誰に対して暮らして在るのか、揚々気取れぬ〝厚み〟を呈せた群象(ぐんしょう)に在る。緩い坂道(さか)など、何処(どこ)まで行っても緩い傾斜で、俺の覚(かく)から散々離れたmonk(モンク)の宴は執拗(しつこ)く謳って仰け反り振り向き、翻(かえ)った眼(まなこ)を異様に紅(あか)らめ、俺に対する血色掲げて自面(じめん)の体温(おんど)を紫陽(しよう)に描(か)かせてほっそりして在る。〝山の音〟など人の欲する共鳴(ひびき)に打たれてぐだぐだ崩れて、具体(かたち)の成せない遠い共鳴(ひびき)に薄ら隠れて紋様を知り、俺から隠れた〝哀れな末路〟を巧みに隠して静まり返った遠い美的を静かに挙げつつ居眠りして在る。俺の感覚(いしき)はそうした〝共鳴(ひびき)〟を巧みに通(とお)って算段し始め、淡く担げる〝浮世の懸橋(はし)〟など巧みに賄い薄ら架け活き、激しさ忘れる浮世に生き着き、外界(そと)で騒げる他人(ひと)の〝宴〟へすんなり這入る。初秋(あき)の夜長と昼の〝夜長〟がほとほと落ち合う合流点へと俺の心身(からだ)は暫く透って他人(ひと)から見知らぬ虚無を吐き付け未完を愛し、未完に終えられ謎を遺した他人(ひと)の奇策に順繰り辿って仄(ぼ)んやり微笑(ほほ)えみ、哀れに微笑(わら)える他人(ひと)の限りは限度を知れずにほっそり棚引き、俺の感覚(いしき)を巧く誘(いざな)い宙(そら)へと翻(かえ)って大童に在る。俺の気熱が生命(いのち)を放(ほう)って成らせた大樹は、陽(よう)を象り生命(いのち)を受け継ぎ、継ぎ接ぎだらけの他人の表情(かお)から可笑しな文句を構成した後(あと)、俺へと対せる具現を射止めてしっかり立ち得た。樹(き)から発する人間(ひと)への坩堝は俺の記憶がこれまで観て来た鉄壁(かべ)を講じる淡い残骸(むくろ)を大いに着た儘、俺へ対せる無重の要(かなめ)をしっかり取り寄せ、揚々生(ゆ)くまま各自の愛した古郷(こきょう)へ飛び生(ゆ)き失速し始め、宙(そら)から放(ほう)った水を被(かぶ)れば、忽ち失(き)え行く努力を失い家族を射止めぬ他人(ひと)の未来を散在せる儘、俺の感覚(いしき)へほっそり翻(かえ)って無音に息衝き、具現(からだ)を忘れて無色に化(か)し得た小さな具体(からだ)を、ほっそり和らげ経過(とき)に散(さん)せる、過去(むかし)を掲げて〝水〟へと対する。微分され行く結晶(つぶ)の木霊は〝山〟透った子音(おと)へと小刻(こまぎ)れ、俺から愛せた人への温(ぬく)みは初秋(あき)の涼風(かぜ)へとすんなり這入って身固め始めて、誰から何から鑑賞されても決して曲げ得ぬ美色(びしょく)を放(ほう)って雲散され行く余程に透った未知の家来を従属させ得る。静かに降り立つ〝家来〟の身元は、俺から離れた気色に降り立ち自分を紡ぎ、滅多の事では雨散(うさん)に定めぬ無力を欲して衰退して生(ゆ)く。俺の身元はそうした気色に自分へ取り付く景色を観たまま無性(むしょう)に分れる篝の麓で〝哀れ〟を共鳴(さけ)んだ群象(むれ)を知り抜き、滅法矢鱈に換算され行く清閑(しずか)な山緑(みどり)に彩らせた儘、自分の降り立つ〝山〟の景色を美化に努める遊興詩人へ姿態(すがた)を化(か)え生(ゆ)く。清閑(しずか)な〝音頭〟がどれだけ鳴いても、獣の通れる細い山道(みち)には青い花など一つ咲け得ぬ紫煙(けむり)が立ち行き〝緑〟を化(か)えて、木枠(わく)に灯った可笑しな景色は、そこに潰えた人命(いのち)を携え放浪する内、俺へと懐いた〝人命救助〟が紫煙(けむり)に巻かれて仄(ぼ)んやりして行く。俺の周囲(まわり)は生命(いのち)を絶たれて淡路を通(とお)った他力の霞が幾様(いくよう)豊かにほくほくして居り、古豪と呈した〝救助〟へ際せた人の影でも、竜胆(はな)の落ち行く無暗な気力(ちから)は俺に対して鷹揚である。〝細い道〟には俺から透った〝淡路〟へ辿れる霞が立ち行き、旧い〝木枠〟はほろろに灯せた強い気力(ちから)をほっそり固めた群象(むれ)を退(しりぞ)け俺から独歩(ある)ける無造の琥珀をしっかり射止めて散漫に立ち。淡く棚引く宙(そら)への帰路へは白雲(くも)が講じる白煙(けむり)が立ち込め、立派に仕上がる虚構の畝(うねり)を静観している。怒涛の記憶にすんなり紛れる俺から透った感覚(いしき)の内には、晴れた青空(そら)へとしっかり延び行く竜胆(はな)の吐息が虚構を嫌って落ち着き始めて、如何(どう)でも止(や)めない孤高の宴は気運(きうん)を強請って寸断され生き、俺の脳裏をしっかり翳(かす)める無機を灯して分団に在る。分れた群象(むれ)には立派に象(と)られる人の生命(いのち)が我が身を呈してほっそり立ち込め、思惑(こころ)を謳える仮称(かしょう)を装い題に冠した刹那の文句(ことば)を〝白紙〟に書き留め微笑(わら)って在って、微力を伴い失速する内、俺の腕にも掠め奪(と)れ得る堅い気色に散在した儘、恥辱を忘れる優雅な気配を満喫して居た。〝宴〟に敷かれた冠名(かんめい)とは又、俺から灯った温(ぬく)い気色へ分裂して活き、細かく途切れた各自の小片(はへん)は破れぬ儘にて浮世へ佇み、一向落ちない輝彩(きさい)を灯して生(い)き活(い)きして在る。「夢」と冠した〝宴〟とは又、俺の歩速(ほそく)をやんわり緩めて晴空(そら)へと渡った白煙(けむり)に横たえ微笑して居り、唐変卜から俺へと成らせたやおらの静気(しずけ)に自体を任せてほっそり佇む陽(よう)の試算へ屈折して活き、俺が欲した青い情(じょう)には億尾にも無い脆弱(よわ)い記憶が隠滅して生(ゆ)く無様な波動を観賞している。人の生気が矢庭に通れる〝波動の軌跡(みち)〟には初秋の落ち葉が仔細に色付く俺へと向き得た紅い勝気が静か足るうち奔走して居り、気付き忘れた人への生命(いのち)を初春(はる)の暦に流行(なが)して行くのは軌跡(みち)に根付いた淡い突起に葬られている。そうした流動(うごき)を仔細に採るまま俺を取り巻く無機の気色は景色に紛れて清閑に就き、黄色い萎んが宙へと輝(ひか)った絵巻物から、俺と人とに悠々象(と)られた無様なの主観(あるじ)は幻想(ゆめ)に彩(と)られてねっとり立ち行く〝生き残り〟として俺と人との情(じょう)に気取られ底辺(そこ)へと活き行く人の思考(ドグマ)を縁取り始める。幻想(ゆめ)の底辺(そこ)へと根付けた教理(ドグマ)は一進一退、進まず弛まず、自体(おのれ)の呈せた淡い気色を、自由自在に羽ばたけ活き切る至高の教義(ドグマ)へ追走させ得て、宙(そら)へと浮んだ透った試験管(グラス)に自体(おのれ)を立ち入れ密封して活き、快活極まる孤高の舞踏(ダンス)は野平(のっぺ)り灯った陽(よう)の淀みを裸体に受け入れ、活殺(かっさつ)され行く天変等には繁(しげ)く浮んだ他人(ひと)の行為が充満して居た。しどろもどろに馴らせた羽化には文士のきらいが人へ立ち込め体当りをして、何処(どこ)まで活きても類(たぐい)を観れない淡い荒野が分散するまま自己(おのれ)へ介せた残骸(むくろ)のcoachを真に受け小刻み、すんなり翻(かえ)った昼間の情事に〝燈り〟の観得ない活気を報され憤慨したのは俺へと懐けた初春(はる)の陽気にすんなり通(とお)って自然を象(かたど)る。経過(とき)の狭間で夜雲が流行(なが)れて、見る見る〝無残〟に晴朗(せいろう)際立つ晴嵐(あらし)が過ぎれば、過去に振り向く以前(むかし)の主観(あるじ)は精神(こころ)の白紙を放棄するまま故習(むかし)に識(し)り得た人への煩悩(なやみ)を活殺(かっさつ)し始め、小山に透った淡い路(みち)には、俺の心中(こころ)へ隠し切れない見事の試算が人の気迫にぽつんと吹き立ち、俺の行方を胸中(こころ)に按じて問わず語りに詩(うた)を詠って徘徊して生(ゆ)く。思惑(こころ)成らずも初秋(あき)に満ち得た結束(むすび)の跡には、自然(じねん)の実力(ちから)が見事に宿った景色を携え輪舞曲(ロンド)を置き遣る。白い宙(そら)から小脇に抱えた〝人〟への下りを悠々自適に燻(くす)ねた輩は、俺と独歩(ある)けた紫煙(しえん)の道にも白煙(けむり)の路(みち)にも、堂々豊かに飼育を揺らせる人への御意などしっくり目立って上手と沸き立ち、三寒四温の自然(じねん)の道理はほっそり隠れて効を魅せつつ、人と俺には転んで直って辿り着け得ぬ〝未開の森林(もり)〟など上手に佇み微笑んで居て、微笑を呈する流動(うごき)の端(はし)から脆く蠢く初老の白刃(やいば)がこっそり歯を観せ生きて行くのが宙(そら)から観得ても〝底辺(そこ)〟から見得ても〝混沌・上手〟に浮き立って居た。俺の精神(こころ)は心身(からだ)を預けた不運の生気にほっそり立ち活き、〝混沌・上手〟を巧みに操る宙(そら)の息吹に上々乗り活き、昨日に沈んだ人間(ひと)の具現(かたち)を〝手造り・上手〟にぐらぐら仕上げて混迷に断ち、切られた小片(はへん)は宙(そら)の抵抗力(ちから)に破れぬ内(まま)にて、暫く透った〝山師(やまし)〟の遊興(あそび)に相対(そうたい)している。蛞蝓みたいな光沢(ひかり)の通(とお)った小虫が一匹、大きな気配を未然に掲げて奔走して居た。何処(どこ)へ向けての〝奔走〟なのかが今いち掴めず、表情(かお)を隠して〝狐寝入り〟に徹した我だが、我欲に満ち得た〝宙(そら)〟の翻(かえ)りが遠(とお)に辿れた〝三寒四温〟を自由気儘に描写をし始め、堂々豊かな初春(はる)への傾斜を宙(そら)から伸び込む自体の勝気へ根付かせ生(ゆ)く儘、その内〝徹した俺〟の歩影(ほかげ)は意を失くした無機の内(まま)にて、小鳥が翔(と)び行く弱い景色を堪能して活き、右と左を全く識(し)らない無垢な古式を、漆黒(くろ)い暗(やみ)へと棄(な)げ付け損ねる淡い夢など堪能していて、堂々巡りの波線の照射が俺の額(ひたい)へ縁当(ふちあた)るのには相応(そなわ)り準備が敷かれた派手の余韻(におい)が所々に散滅(さんめつ)したまま体温(ぬくみ)の還りを密かに待ち行く身構えに在る。佇む脚色(いろ)には俺の前方(まえ)にて小さく跳べ得る未色(みしょく)の文化が聡明(かしこ)く頷き揺ら揺ら蠢き、初春(はる)の景色へ行く行く辿れぬ初秋(あき)の気長を充分認(したた)め孤高に棚引き、「明日(あす)」への感覚(いしき)を揚々射止めて得意気に在る。白さに翳んだ宙(そら)の捻(ねじ)れは〝怒涛〟に澄ませた俺への感覚(いしき)を薄ら侍らせ、他人(ひと)から識(し)れない微かの吐息も自然(じねん)に彩(と)られる流行(ながれ)へ向くまま活水(かっすい)され行く流水(みず)の如くに余韻を認(したた)め、自流(おのれ)の果(さ)きさえ気取って燈せる。自然(しぜん)に問われた山の底辺(そこ)から上手く出された〝殺戮隊〟とは小虫に化け得る活力(ちから)を伴う生命(いのち)に有り付き自体を流動(うご)かし、俺の佇む古風な景色に我楽(がらく)を奏でて浸透して来る。透った自体(からだ)は心身(からだ)を灯して俺へと近付き、白砂に見立てた宙(そら)への白路(みち)まで曲折したまま〝意〟を介さず儘にてほっそり立ち行き、人間(ひと)から離れた円らの生命(いのち)を俺と他人(ひと)とに分散する儘、自体(おのれ)の岐路へと向かい就くのは〝人間(ひと)〟から離れた暗(あん)の内にて未熟に極まる。人間(ひと)が配した〝山〟であるから、小耳に挟める人間(ひと)の詠(うた)とは詠吟(えいぎん)豊かな不毛を彩(と)られず孤踏(ことう)を束ね、初めから観ぬ〝人命救助〟の淡い〝脚色(いろ)〟には、山道(とおり)に置かれた人間(ひと)の轆轤が無性(むしょう)に片付く幻想(ゆめ)さえ靡かせ主導を操(と)り行き、揚々画せぬ〝泡(あぶく)〟の脚色(いろ)には、人間(ひと)から彩(と)られて全く落ちない孤独の景色が棚引いていた。
~司春(ししゅん)~『夢時代』より冒頭抜粋 天川裕司 @tenkawayuji
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