第30話 第二章の始まりだ!!
「ワンワン!! ワフ!」
「タボ、どうした? いつもの場所はそっちじゃないぞ」
「ワン!」
さて。
なんとかあのゴブリン洞窟を抜け出した後だ。
Vtuberさんの意識はまだ戻らない。
仕方ないので彼女?は俺がおんぶする事にした。
羽のように軽いとは、まさにこの事だろう。
なんでこんなに脚が長いのに体重がないんだ? すごいね、人体。
そんな感じでVtuberさんを背負い、いつもの小川のほとりに戻ろうという感じだが……。
「ワンワン! キューンきゅーん……! ワフ!」
『……貴公、彼はどうやら……ついて来いと言っているぞ?』
「ワン!」
この感じよ。
タボが急に先導を始め、それがどうも……森の奥に向かっているのだ。
木の根っこや茂みをを飛び越え、時たまこっちをおすわりして待って、近付けばまた前を歩き始める。
こっちに来い、こっちこっち!
きちんと着いてきてる?
ついてなきゃだめだよ!
そんな顔で俺達を見ている。
やだ〜可愛い〜。
でも、なんで、森の奥に??
外敵の察知に今の所、反応はない。
危険な場所に向かっている訳でも無さそうだ。
そのままタボについて行く。
森は深く、深く。
先程まですぐ上を見上げればあった青空も、気付けば高い樹木によって見えない。
空を、森が隠しているみたいだ……。
『き、貴公……すまない、主人を背負わせてしまって……きつくないか?』
ヨチヨチと俺の隣を歩く小さなワイバーン。
傷のダメージにより元のサイズにはまだ戻れないらしい。
「問題ない。お前の主人、飯はきちんと食べているのか?」
『む……じ、実は、主人はあまり、食事を取っていないのだ……何を食べても味がしないと言って……妹御も同じくだが……」
「やはり……皆同じか……妹御? 彼女には妹もいるのか?」
『え? 彼女?』
「え?」
ワイバーンが固まる。
鳩がフレーメン反応で固まったような変な顔。
ネコじゃあるまいし。
『貴――』
「ワン!!」
ワイバーンが何かを言い掛けた瞬間、タボが立ち止まり、そして吠える。
おすわりしたまま、尻尾を振っているが……。
「タボ。ここは?」
「わふ!」
いや、わふじゃないが。
行き止まりだ。
いつのまにか、獣道すら消えて、周囲全部を樹で囲まれている。
『き、貴公……! き、霧が……』
「おい、マジか」
いつのまにか、周囲に霧が立ち込め始める。
空気が冷たく、透明になっていく感覚、まるで、夜明けの山頂のような空気。
みるみるうちに、ワイバーンやタボの姿すら見えない濃い霧に包まれて――。
「! タボ、ワイバーン! その場を動くな! 遭難しちま――」
「ワォオォォォォォォォォォン!!!!!」
タボの遠吠えが響く、同時に風が吹いて、霧があたりを舞う。
思わず、目を瞑る……。
な、なにが起き……。
「え?」
目を開けた瞬間、今度こそ俺は呆気にとられた。
いや、この世界に来てからこんなの多いが、多分これがぶっちぎりの異常事態だ。
光景。
花畑、色とりどりの花、草。
小川、しとやかに流れる透明な水。
小鳥が歌い、空は青く。
さっきまでいたのは森。
でも森が消えて、目の前には一面の花畑が――。
「わんわん!」
「あ、タボ! こら、走るなって! クソ、ワイバーン、俺の肩に乗れ!」
『わ、わかったぞ!』
タボが花畑をずかずか進む。
仕方ない、うきうきドックを追いかける。
すると――。
「おいおいおいおい、こりゃ……なんだ……?」
すぐに、それが視界に入った。
それは樹だ。
大きい……俺が毒手の訓練で使っていた木よりも、遥かに……。
どこまで伸びてるんだ? 木の高さ……てっぺんが見えないぞ……。
太さだって、これじゃまるでビル……。
『き、貴公……こ、この、木……ま、まさか……!! いや、そんな、ここにある訳が……』
ワイバーンがぶるぶる震え始めて。
『おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい、マジかヨ!! パーラハーラ!! お前、生きてたんカ!! ンンン? 随分、小さくなってね? まあいいかァ! 香りは同じだ!』
「ワン! わんわん!」
地響き、いや……声。
声がした。
その声は、意味がわからないのだが、目の前の樹から響いている。
「ワン!」
タボ、やめなさい。
樹を見上げながら返事みたいに吠えないの。
『がっはっはっは! 言うじゃねえか! いいだろう、お前が連れてきたっつー事はこいつが新しい主人だな!』
あ、ダメだ、これ。しゃべってるわ、木が。
よく見ると、木の表面に目のような……。
デクの木サマか?????
「木、木が、お、お前が、喋ってるのか……」
『おいおいおいおい、木なんてひでえな。ワタシ様はアンタの家、だぜ?? 愛しき我が家って奴さ! アンタにはその資格があるなァ!! わかるぜ! アンタからは陛下の香りがするからな! もう香り付けされてんじゃねえか!」
「は?」
情報量が多いのに聞き捨てならない事ばかり聞こえてくる。
『おっと自己紹介が遅れたなァ!! ワタシ様はグレートスピリッツ・”モデルアース”にして――厄王軍が福音魔将――”慈愛”担当! ドリュアス・レ・デクだ!!』
「――あ?????」
『ジアイジアイジアイジアイ……!!! 末永く宜しくなァ、マァ歓迎するぜ、厄王陛下に代わる――新たな、マイ、マスタァァァァァ!!
「……タボ?」
「ワン!!」
ワンじゃないが。
ガコン。
しゃべる大樹の口が大きく開く。
入口、のような――いや、まさか……。
『ま、とりあえず、ワタシ様の中に入ってから話しようや! この口が正門なァ!! まっすぐ進めばメインホールにたどりつくからヨォ!!』
入口だったわ。家だったわ。
「デクの木サマじゃん」
『ォオ! ワタシ様のラストネームはデクだぜ! 早速覚えてくれてありがとなァ!! マイマスタァァァァァ』
あとがき
いつもご覧頂きありがとうございます。
謎の拠点も手に入れたのでここからストーリー本番になります。
このままカクヨムコン駆け抜けたいので、大変恐縮ですが、まだ評価してねえわという方は下の★評価にご協力頂ければ幸いです。
貴方の評価で俺は救われる。
すでに評価してくださった方は本当にありがとうございます。
読んで頂いてる方のおかげで連載続けられてます。
引き続き何卒宜しくお願い申し上げます。
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