自炊の夢、コンビニの現実

灰塵

駄メロス

 始まった1日を睨み寝床という自国から他国に降りる。8時40分。遅刻の確定した自国の王にはもはや余裕さえある。煙草に火をつけ煙のようにふわふわとした脳を起こす。


 身支度を整え家を出るぞと言うところで思い出した。今日の教授は遅刻に厳しいのである。揺らぐ。揺らぐ。



ここまでで大抵の読者は勘づくだろうがこの王、つまるところ本作品の主人公は真面目な人間ではない。いわゆる限界大学生とでも言うべきか。否。限界も限界大学生としよう。


そんな彼に悩む暇はない。遅刻も出席扱い。落とすわけにはいかぬのだ。彼は家賃五万の王城を飛び出し走った。

「私は怒られる。怒られるために走るのだ。」そんな情けないメロスは「いや、まだ始業のベルは鳴らぬ。」と話すアホメロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力(留年)にひきずられて走った。メロスは疾風の如く刑場(教室)に突入した。間に合った。


彼は教室に入るや否や

「私だ、教授! 殺されるのは、私だ。寝坊し遅刻した私は、ここにいる!」

高らかに宣言した。


真と静まり返った教室。なぜか誰もいない。まさかとスマホを確認すると

「休講連絡」


勇者は、ひどく赤面した。

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