一緒に来るか?
ヤマネコ
第1話 映画が見たい二人
「はぁ…」
深夜の自分の部屋で僕は1人ため息をついた。
「まだ起きてたの?」
妹の霧葉が部屋のドアを開き心配そうに声をかけた。
「うん、課題が終わってないから」
「そう、夜更かしも程々にね」
霧葉はそっと扉を閉めて自分の部屋に戻った今から寝ようと思っていたときラインの着信音が鳴った。
主斗からだ。ラインの内容はこうだった。
「映画見よ」
「いいよー」
6時間後
「すまんなー笑」
「ん?」
「火曜友達と見に行くことになってしまった」
「なんでー?」
「ライブの練習帰りに見るって言っちゃった笑」
「おい」
以下の理由によってあっさりと映画を見損ねた。仕方がないから1人で見ようと思っていたがジャンルがホラーだったから心細かった。
翌日
今日は土曜日だからいつもの場所に行く。中央区某所にある二階建ての廃墟だ。あの人はいるかと少し不安だった。
「せんぱーい!今日いますかー?いるなら返事して下さーい!」
返事がないことから今日は留守だと思い帰ろうとしたとき、
「あっ」
廃墟の入口に先輩がいたのを確認した。
「おはよー、ミズキくん〜」
「おはようございます!」
嬉しくて声を張ってしまった。
先輩の名前は鳴海誠一。
いつも僕のことを甘えさせてくれる。
ミステリアスでどこか温もりを感じる人柄に僕は恋をしている。
男子を好きになるのは久しぶりだった。
先輩は鼻歌を歌いながらチョコレートミルクを飲んでいた。
「今日さー、友達に映画断られちゃってさぁ〜」
先輩がストローから口を離して言った。
「あー、僕もです」
苦笑しながら頷いた。
「うっそ?!何見る予定だった?」
先輩は思ったよりびっくりしたリアクションをしてみせた。
「ウィザード・デストラクション」
タイトルが少し長いため噛まないか心配していたがなんとか言い切れた。
「そう!それだよ!今世間を騒がせてる映画!一緒に来るか?!」
先輩がはしゃいでいる姿は珍しい。いや、元々このような性格だったのかもしれない。
「一緒に来るか?」
今まで被っていたフードを上げてこちらを見ている。
「はい!」
僕はハッキリと返事を返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます