第4話

第4章: 雷の槌


森の中の空き地は、完全に静まり返っていた。その静寂を破るのは、ビョルンの槌が地面を叩く音だけだった。彼の威圧的な姿がその場を支配し、影が森全体に広がるように見えた。


ビョルンの身長はほぼ2メートル半もあり、彫刻のように筋肉質な体をしていた。その鎧は金属の輝きを放ち、青白く光るルーン文字が刻まれていた。肩には熊の毛皮をまとい、これは戦士としての過去を象徴する記念品だった。右手には巨大な槌を握り、その槌にも同じルーンが彫られ、小さな稲妻が散発的に空中で弾けていた。


彼の氷のような冷たい青い目がアレックスを見下ろし、興味と軽蔑が入り混じった表情を浮かべていた。

「準備はいいか、坊主。俺は試練で手加減しない主義なんだ。」

ビョルンは笑みを浮かべ、その声は雷鳴のように響いた。


アレックスの心臓は激しく脈打っていた。ビョルンと比べると、自分は嵐の中の虫けらのようだった。

「これって、本当に冗談じゃないのか?」と呟いた。


「冗談ではない。」ケツァルコアトルが真剣な口調で言った。

「彼は一切の容赦をしない。向き合うか、ここで倒れるかだ。」


ビョルンはその巨大な槌を、まるで軽いもののように持ち上げた。

「最初の教訓だ:力任せがすべてではないが、時にはそれで十分だ。」


ビョルンが槌を地面に叩きつけると、一瞬で電気と風の衝撃波が生じ、周囲の木々をなぎ倒した。アレックスは辛うじて横に飛び退いたが、その爆発に巻き込まれ、近くの木に叩きつけられた。


「うっ…!」アレックスは地面に倒れ込み、全身が痛みに包まれた。


「もう音を上げたのか?まだ始まったばかりだぞ。」ビョルンはゆっくりと歩み寄った。


ビョルンの動きは一つ一つが正確で破壊的だった。その攻撃は単に強力なだけでなく、電撃を伴い、周囲の空気はオゾンの匂いで満たされた。槌を振り下ろすたびに地面にクレーターができ、エネルギーの放射が嵐の雷光のように森を照らした。


アレックスは風を使ってなんとか回避を試み、横に素早く移動することで攻撃を避けた。しかし、ビョルンの絶え間ないプレッシャーにより、動く余地を奪われていった。


「集中しろ!」ケツァルコアトルが叫んだ。

「風は逃げるためだけのものじゃない。それを攻撃に使え。」


アレックスは歯を食いしばり、両手を伸ばした。風の突風がビョルンに向かって放たれたが、彼は微動だにしなかった。

「それだけか?」ビョルンは槌を振り上げ、その風を電気の渦に変えて吸収した。

「もっと頑張れ、坊主。」


アレックスは荒い息をつきながら、どうすればいいのか考えを巡らせた。一秒ごとに、ビョルンの力は増しているように思えた。


「彼の動きは遅いが、破壊的だ。」ケツァルコアトルが助言した。

「その巨体を利用しろ。速度と風で彼を揺さぶるんだ。」


アレックスは一瞬目を閉じ、風が自分の周りを流れる感覚を思い出した。そして目を開いたとき、彼のシンボルが一層強く輝いていた。


「よし、やってみるか。」

ビョルンが雷のように輝く槌で振り下ろしてきたところを、アレックスは横にかわしつつ、竜巻を作りビョルンの足元を包み込んだ。一瞬、巨体がバランスを崩してよろけた。


「今だ!」ケツァルコアトルが叫ぶ。


アレックスは持てる限りの風を一点に集中させ、それをビョルンに向けて放った。その攻撃は彼を後退させ、ビョルンが不満げに唸った。


「まあまあだな。」ビョルンは鎧についた土埃を払いながら言った。

「だが、まだまだ弱い。」


ビョルンは今度は槌を空高く掲げた。すると雷が彼に直撃し、電気のオーラが全身を包み込んだ。そして怒りの咆哮とともに、槌をアレックスに向かって投げつけた。


槌は雷に包まれたミサイルのように空を切り裂きながら飛んできた。アレックスは間一髪でそれをかわしたが、槌が地面に衝突した際の爆発で吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


ビョルンは手を差し出すと、槌が磁石に引き寄せられるように戻ってきた。

「予想以上に耐えるな。それは評価しよう。」


アレックスは膝を震わせながら立ち上がった。全身に傷がありながらも、諦めることはしなかった。

「こんなところで倒れると思ったら、大間違いだ。」


アレックスは最後の力を振り絞り、周囲の風を全て集め、自分の周りに渦を作り出した。風の勢いは増し、葉や枝が宙を舞い、自然のバリアを形成した。


ビョルンは眉を上げ、興味深そうに見つめた。

「まだ隠している力があったか。」


アレックスの風はさらに強まり、透明な蛇のような形をして彼の周りを旋回した。

「これでどうだ。」


ビョルンは再び槌を持ち上げ、笑みを浮かべた。

「それを待っていたんだ。」


二人は互いに向かって突進し、その力の衝突が森を明るく照らし、何キロメートルも離れた場所からでもその光景が見えた。


第4章 終わり


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