2話 水分補給は大事だゾ
野鳥の心地よい囀りが、歩く度に耳へ流れて来る。まさに自然の演奏だ。
地面の柔らかい土の上にはカーペットのように敷き詰められた落ち葉。
大小様々な樹木と、それを彩る多様な花。
こんな場所に放り込まれると、警戒心も勝手に緩んでしまう。
故郷の北部の森はこの森と肩を並べる程の美貌を持ち合わせていたが、戦争の影響ですっかりと荒廃してしまった。豊かな植物は焼夷弾で焼け、生息していた動物達の住処まで奪った。本当に、人間は臆病なくせに残忍だと改めて実感した。せめて、この森は平和が続いてほしいところだ。
森に形成された自然の道を歩いていると、木と木の間から小川が流れているのが見えたのでそこへ向かった。
川原に装備を預けると、プールを見て喜ぶ子供のように飛び込んだ。
「これだこれ、これを求めてたんだ」
体の肉から噴き出ていた汗は新鮮な真水に塗り替えられる。
ついでに喉も渇いているし、水を頂こう。不純な物質が混ざっているかもしれないが、その時は濾過すればいいだけの話だ。
一度川原に戻り、プレートキャリアに付いた小さなバッグから食事の際に使うアルミ製の皿を取り出すと、それを持って川の水を掬った。水はやはり透き通っていて、塗装が剥がれ茶色く変色した皿の底がくっきりと見えた。
干からびた喉にも川を流す。
「はあこいつは美味いな」
拠点にも当然水はあったが、タンクに貯水したそれは全体的に濁っており、飲む際は必ず濾過装置で清潔な水にしなければならなかった。しかし、今飲んでいる水はそんな事しなくても安全に口へ運べる最高の存在だ。
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※この小説はフィクションであり、実在の国家や組織、人物とは一切関係ございません。また、特定の思想を支持、礼賛する意図もありません。
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