第7話

 京ちゃんとの出会いを思い出して幸せを噛み締める。


 ただ思い出すと同時に「可哀想な飾利が好き」という言葉が「苦手なら感情を出せるようにしてあげる」に連動してる気がして引っかかった。


 私は京ちゃんに尋ねてみる。


「私に時々塩対応したりするのってそれが目的?」

「あぁ……うん。そうだね。一種の”愛の確認作業”ってやつだよ」


 マジか。少しビックリする。

 付き合ってからたまにそんなことを仕掛けてくると思ったし、ついこの間も勉強の邪魔をしたら別れをチラつかされて心の奥から汗をかいて慌てふためいた。


「確認作業って……あれ本当に辛いんだけど」

「飾利が飾利のままでいてくれたらやらないよ」


 わざと含みを持たせてそんなことを言う京ちゃん。

 正直いろいろと含みすぎてその言葉は重い。


 色んなことを受けとめてくれる京ちゃんのことが好きだからこそ、無視されたり嫌われたりするのが耐えられない。


 私が京ちゃんの望む私のままでいられてるかが分からないから、今までのそういうちょっとした塩対応のいじりも本気なんじゃないかって信じちゃう。


 私には京ちゃんが自分を好きでいてくれる理由がいまひとつわからない。

 ——可哀想な飾利が可愛いから。とはいうものの、私にはそれを客観的な視点で見ることは不可能。

 


 だから可愛い以外に京ちゃんの言う「飾利のまま」でいるために、まっすぐ感情のまま京ちゃんの前では振る舞っている。


 別れをチラつかされても好きでいて、それでいいと思うなんて歪な関係かもなと心で少し思いながらそれを噛み砕いて奥底に沈める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る