幼馴染をパーティーメンバーが追放しようとしたので逆にそいつらを追放してみた~ついでに別パーティーを追放された奴らを仲間にしたら最強のパーティーが出来上がった~
新条優里
第1話秘技追放返し
冒険者ギルドの片隅。セシリアとマティアスから話があるという。俺とノアが呼び出された。根拠はないが何か嫌な予感がする。
「ノア、貴方を勇者パーティーから追放しますわ。実力不足は置いていくことにしましたの」
「これは僕たちの総意だ。わかってくれ、くくくっ」
「追放……?」
ノアは愕然としている。当然だ。こんなことを突然言い出すなんて。
「ちょっと待て、二人とも。俺は聞いてないぞ。それにこのパーティーのリーダーは俺だ。勝手に決めるな!」
俺たち勇者パーティーは勇者である俺、補助術師のノア、聖女のセシリア、賢者のマティアスの四人で構成されている。
マティアスは総意とか言っていたが、こんなこと聞いてないし、許せるはずもない。
「あら? 言ってませんでしたわね。ジャスティンもこんなに素敵な提案気に入ってくれると思ってましたの。ノアなんている意味ないと思いませんか? 何の役にも立ってないではありませんか? それに平民ですわ。わたくしたちとは住む世界が違いますの。おーほっほっほっ!」
「セシリアの言う通りだ。補助術師? 何だそれは? いる意味などないだろう。それに平民ごときが僕たちと一緒にいるのは気に入らないんだよ」
「あ……あ……僕が役に立っていない……?」
こいつらは何を言っている? ノアが役になっていない? 俺たち勇者パーティーを陰で支えているのはノアだ。そのノアに向かって追放するだなんて許せるわけがない。
「ノア、落ち着け。お前は俺たち勇者パーティーの要だ、いつも言ってるだろ? お前はもっと自信を持っていいんだよ。どっしりと構えてろ。セシリア、マティアスふざけてるのか? お前たちの今の実力が本当にお前たち自身のものなのか考えたことがあるのか? 俺たち勇者パーティーはノアの補助魔法があってこそ成り立っている。それに平民と一緒にいるのが気に入らない? だったら俺を追放するか? 俺も平民だぞ」
「あ……ああ……わかった、ジャスティン。ありがとう」
俺は平民だが、勇者学院を首席で卒業し勇者に任命された。三人とも勇者学院の卒業生で、ノアが序列二位、マティアスが七位、セシリアが九位だった。
実技の一位は常に俺で、学科の一位は常にノアだった。お互いどちらが勇者になるか切磋琢磨していたが、最終選考で俺に決まったのだ。
セシリアとマティアスは誰よりも才能に溢れていたが、努力を怠り入学時と能力は変わることはなかった。
授業をさぼることも珍しくなく、聖女と賢者でありながら未だに簡易的な魔法しか使うことが出来ない。
勇者パーティーを組むにあたって、実力不足で人間的にも信用できない二人は候補になかったが、貴族側と王家の圧力により俺は断ることは出来なかった。二人は公爵家の人間だからだ。
もっと信頼できる仲間と組んだ方が良いという想いもあったが、魔族と戦うにあたって、貴族家と王家の後ろ盾も必要だと当時は思っていたのだ。
その考えは今となっては間違いだと気付かされることになるが。
「本当はそうしたいところ……おっと、口が滑りましたわ、失礼。何を仰いますの、ジャスティン? 勇者パーティーから勇者を追放できるわけないではありませんか? ご冗談を。わたくしたちが追放したいのはノアだけですわ。魔族討伐という崇高な使命を負ったわたくしたちには無能は必要ありませんの。それと、わたくしたちの実力が自分たちのものではない? 何を仰ってますの?」
「セシリアの言う通りだ。補助術師なんてわけのわからない者を連れて行くくらいなら大魔導士か、聖騎士の方が良いと以前に僕は提言させてもらったはずだよ。それが聞き入れられないとはね。貴族側から圧力が……おっと、今のは聞かなかったことにしてくれ、ふふ。僕たちの実力が僕たちの自身のものでない? とんちかな? そんな冗談に付き合っている暇はないんだよ」
ノアの実力に本当に気付いていないとはな。ノアは自らの力を誇示する性格でもないから、俺はここまで黙っていたが、気付いていないのなら説明する他ないか。
「お前たちは見えてないのか?」
「はい? 何がですの?」
「見えてない? 何が?」
「ノアの補助魔法だ。これだけの強大な補助魔法の流れが見えないのか? 聖女と賢者だからもっと魔力を見る目は長けていると思っていたんだがな。彼の補助魔法のおかげで俺たちは安全に旅が出来ている。そのことに本当に気付いていないのか?」
俺は勇者学院時代に魔族の魔法に対抗するために目を鍛え続けた。おかげで補助魔法のような無属性魔法が可視化できるようになったのだ。
それまでの俺のノアに対する認識は実技が苦手ながり勉だったが、実はそうではなかったのだ。
彼は座学だけでなく、実は実技も非常に優秀だったのだ。それに気付いてから俺は改めてノアを尊敬するようになった。
「何を仰ってますの? 見えてないのではなく、そんなものありはしませんわ。今までの功績はわたくしの実力によるものですわ」
「そうだな。そんな冗談を言っている暇があったら早くノアを追放しよう。無能は必要ない」
もう俺の気持ちは決まった。もう、覆ることはない。それに我慢の限界だ。
「そうか……それがお前たちの本音なのか……」
「わたくしたちの提案を聞いていただけますの? そうですわよね、ジャスティンはわたくしたちの味方ですものね」
「賢明な判断を期待してるよ、ふふ」
「追放する……」
「良かったですわ、ジャスティンも同じ気持ちでしたのね」
「そうだよな、それでいいんだよ、ジャスティン。流石勇者だ」
「セシリア・アナスタシア・ダルクロア、マティアス・フェリックス・ノルト両名を勇者パーティーから追放する!」
「は、はい? な、何を仰ってますの? 冗談はやめてくださいまし!」
「そ……そうだよ。何の冗談なんだ……?」
「冗談ではない。これは正式な通知だ。勇者ジャスティン・クロスウィンの名において、セシリア、マティアス両名を勇者パーティーから追放する。俺は仲間を侮辱する奴は許さない!」
「な……何かの……これは何かの間違いですわ……」
「そ……そうだ……今なら間に合う。ジャスティン、撤回しろ! こんなことしてただではすまないぞ!」
「撤回する気はない。お前たちはノアを侮辱した。もう、完全に俺の堪忍袋の緒は切れてるんだよ!」
「ジャスティン……本当にいいの?」
「気にするな、ノア。俺の仲間はお前だけだ。二人だけでも魔族を討伐しよう。険しい道だが、どこまででも付いて来てもらうぞ」
「う……うん。ありがとう……ありがとう……ジャスティン……」
俺とノアは幼い時から勇者になると切磋琢磨してきた仲だ。貴族や王家が怖いからと言って二人の提案を飲んだら、今までの俺たちを信じることが出来ない。
信念まで曲げてしまったら、自分たちの人生を全て否定することになる。
それだけはどうしても出来ない。
「お、覚えていなさいですわ~!」
「覚えていろよ! 貴族の恐ろしさを教えてやる!」
二人は捨て台詞を残して、冒険者ギルドを後にした。
情けない姿だが、嗤っている場合ではない。
これから貴族の妨害に遭い大変なことになるだろう。
国民皆から貴族を敵に回した愚か者として誹られるかもしれない。でも、後悔はしていない。
結果を出せばいいんだ。俺たちの目的は貴族に阿ることではなく、魔族を討伐することだ。
そうすればいつか皆わかってくれるだろう。
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