空って青いよ、どうしてなの?

沼津平成

 

 井上美佳子いのうえみかこは、スーパーへ買い物に行った帰り、自転車に乗って、息子の井上日菜太を幼稚園から連れて帰った。

 その帰りのことだった。肩車の重みがのしかかる美佳子の猫背の体に、ふわりとした優しい声が聞こえてきた。


「ねえねえ」


 他でもない、日菜太の声だった。


「……なあに?」キモを潰したような声だったが美佳子は聞いた。

「あれ、空っていうらしいね」


 日菜太は少し大人びた言動をした。もっとも、その内容はまだまだ幼稚だったが。


「うん、そうだよ。それだけ?」

「違うんだ。ねぇ、空ってどうして青いの?」


「さあ、知らない……」


 美佳子は、日菜太を肩に乗せて、また自転車を漕ぎ出した。

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