同級生の女の子を交通事故からかばって異世界転生したけどその子と会えるようです
砂糖琉
交通事故
学校では仲がいい友達はいなくて挨拶を交わすぐらいの友達しかいない。厳密に言えば友達がいないのではなく親友がいない。
そんな俺に挨拶だけではなく話しかけてくれる女の子が一人だけいた。
それはいつも長い黒髪をなびかせている女の子——
彼女はクラスの中心人物で誰にでも分け隔てなく接している。
俺が特別視されているわけではないのは分かっているが話しかけてもらえるだけで嬉しい。
今日も話せるかな?
考えながらいつも通り学校までの道を歩いていると涼香さんの姿を見つける。
彼女は今一人だ。どうしよう、話しかけようかな?
涼香さんを見ていると横からトラックが走ってくる。
何してるんだ!?
トラックの運転手はスマホをいじっていて涼香さんの存在に気づいていない。
しかも涼香さんもトラックが来ていることに気づいていない。
「あぶない!」
涼香さんを前に突き飛ばす。
物凄いブレーキ音が鳴り響いて俺はトラックに轢かれた。
意識が朦朧とする中、微かに声が聞こえる。
はっきりとは見えないが女の子が泣いている気がする。
良かった、涼香さんは助かったみたいだ。せっかく助かったのに泣かないでくれ。
女の子を守れて死ぬなんて男の本望だ。もう後悔なんて……ない。
そして意識が完全になくなり俺は死んだ。
——お主、まだ生きたいか?
なんだ? とうとう幻聴まで聞こえるようになった。
「幻聴じゃない。目を開けろ!」
目を開けるったって俺は死ん……
目を開けると真っ白な空間に長い髭を生やしたおじいさんが立っていた。
「ここは……天国、なのか?」
「やっと目覚めたか」
「目覚めたって、さっき俺は永遠の眠りについたはず……」
「確かにお主は一度死んだが、それをわしが助けたんじゃ」
「助けた?」
「そうじゃ。お主の一部始終を見ていた。わしは感動したぞ! 大切な人を守るために自らの命を犠牲にするとは!」
こいつは何を言ってるんだ? それだとまるで自分が神みたいな言い方だ。俺は夢を見ているのか?
「紹介が遅れた。わしは神のゼウスじゃ」
確かにゼウスと言われれば似ている気がする。特に髭とか。
「似てるんじゃなくて本人じゃ!」
「じゃあ……おじいさんが神ってことを証明してくれ」
「もしかしてお主、気づいてないのか?」
「気づいてないって何が……?」
「さっきからずっと心の声と会話しておるぞ?」
「!?」
俺はようやく言っている意味が理解できた。
さすがに心を読まれれば神と信じざるを得ない。
「それじゃあ本当に神、なのか……?」
「だからずっとそう言ってるじゃろ」
「ま、まじか……」
今俺が生きていることが何よりの証拠だ。
俺は本当に生き返ったのか。夢のようだ。
「それで何のために俺を生き返らせたんだ?」
「生き返ったのとは少し違う。今から起こることは言わば転生だ」
「転……生? 異世界とかの?」
「そうじゃ。今からお主は別世界に転送されてこれからはそこで生活してもらう」
神と分かって言っていることの信頼度が増したせいで驚きを隠せない。
「それで今からお主にスキルを授ける、と言いたいところだがさっき勇者が召喚された時にスキルを色々持っていかれてしまったんじゃ」
「なるほど……?」
「だからお主には特別に『コピー』のスキルを授ける」
コピー——技を真似るスキルか。それだけ聞けば強そうだ。
「だが普通にコピーはできない。一度、受けた攻撃を真似るスキルだ」
「それって……強いのか?」
「確かにあまり強くなさそうに聞こえる。だが! お主にはこのスキルしかない!」
「どうしてだ?」
「お主は前世で女の子を守って命を落とした。今世はこのスキルで魔物から女の子を守ってコピーして救う……お主以外の適応者は他にいない!」
また人を救えということか。
都合のいいことに涼香さんを庇った時、悪い気はしなかった。
「いいだろう、とことんやってやる」
「それじゃあ早速、転生を始めるぞ」
「あぁ、頼む」
いきなり足元に魔法陣が出てくる。
「それじゃあ最後に、一応伝えておく。前世のお主が通っていた学校のクラスメイトが異世界に召喚される予定じゃ。あと、女神には気をつけろ」
「分かった……って、え!? ちょ、ちょっと! 詳しく聞かせ……」
「健闘を祈っておるぞ」
そして俺は異世界に転生した。
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