或る日の消防訓練!

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

 僕は30歳くらい、30歳になる前、某化学メーカーに勤めていた。工場勤務だった。当時、そのコンビナートには幾つかの消防隊があった。A社隊、B社隊、C社隊、D社隊といった感じだ。数社ずつで1つの部隊が構成されているが、リーダーとなる企業は、消防車を自社で持っている企業。僕達E社はC社の消防隊に組み込まれていた。そして、毎月、定期的にC社に行って、消防訓練をしていた。



 その日、僕等E社からは3人が訓練に参加した。他、F社、G社からも1名ずつ。


 それは、訓練開始早々に起こった。僕と同じE社の先輩が、C社の消防隊員に注意されたのだ。“きっかけ”は些細なことだった。手を後ろで組むときの組み方が、先輩だけ違っていたのだ。普通は、手を一番下にして、そのまま後ろで組む。先輩は、組んでから下に手を下ろす。先輩は1テンポ、リズムが遅れるのだ。


 そこを指摘され、先輩はC社の消防隊員の言う通りにすれば良かったのだが、何故か? 先輩は反発した。


「僕は、消防学校で、このやり方で習ったんです!」

「C社隊にはC社隊のやり方がある、C社隊のやり方に合わせろ!」

「嫌です! せっかく消防学校で習ったことが無意味になります」


 そこから、揉めた。僕と、僕と同じ会社のもう1人の先輩が、割って入って、


「まあ、まあ、まあ、まあ」


と、なだめるのだが、スグにまた揉め出す。結局、その日はろくに訓練が出来ずに終わった。


 “やっと終わってくれた”と思ったら、C社から正式にクレームが来たらしい。上司がC社に行くくらいの問題になってしまった。


 上司がC社に行く前、僕は上司に呼ばれて事情や経緯を聞かれた。ありのままを答えた。すると、


「なんで、止めなかったんだ?」


と、僕が怒られた。もう1人の先輩もいたのに、何故か、僕が怒られた。とりあえず、何回も割って入って止めようとしたとうことだけは伝えた。



 C社の消防隊員と喧嘩した先輩は転勤になった。それだけ大きなことになってしまっていたのか? 僕は驚いた。だけど、なんで僕が怒られるの? 理不尽じゃない?







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或る日の消防訓練! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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