第3話
「ごめんね〜カザミ君。外まで送らせちゃって」
「全然良いよ。ボスの場所も分からないし気長に攻略するつもりだから」
「あ!支部の出張所!あそこに三人ともいるはず」
出張所が目に入ると玲華は目にも止まらぬ速さで建物に入っていく。
「お」
カザミも後を追いかけて中に入るとそこには3人の少女が抱き合って泣き喚きそれを出張所の職員が宥めている状況だった。
「ぐすんっ…………玲華〜!!ごめんね!!直ぐに助けを呼んで戻るつもりだったんだけどシャドウウルフ三体はこの辺のギフターじゃやっぱり厳しくて……」
「そうだよね……シャドウウルフが群を組むなんてありえないもん。アタシもびっくりしたよ、あ!それより姫奈は大丈夫?!」
「うん、今医療室でヒーラーの人から治療受けてる」
「由来と美波も無事で良かった〜」
「玲華はどうやって戻ってきたの?」
「あそこにいるカザミ君が助けてくれたの!!凄いんだよ!アタシ達と同じ歳なのに一瞬でシャドウウルフ三匹片付けちゃったの!」
そう話す玲華の声は中々に大きく出張所にいるギフターから機関の職員の耳に入る。
「矢白 風見さんですね。六本木の支部長がお見えで矢白さんにご用件がお有りとの事でしたのでご同行願えませんか?」
「構いませんよ。じゃあ一之瀬さん、元気でね」
「え?!カザミ君待って!!」
玲華の制止も虚しくカザミは機関の職員と共に奥の部屋へと向かってしまう。
「ギフター生活はどうかな?矢白君」
部屋に入り開口一番、ギフター統括機関六本木支部長識神 樹はカザミに問うた。
「楽しいは楽しいんですけど、受付の人がおすすめしてくれたこの近くの洞窟型ダンジョンあんまり強いモンスターがいなくて少し退屈です」
「ハハハハ、シャドウウルフが少なからずいるダンジョンが退屈か。だが、あのダンジョンはD級。ボスには少しばかり期待しても良いかもしれないよ?」
「本当ですか!!」
「僕の眼は嘘をつかない。ああ、それはそうと君に渡したいものがあって来たんだよ」
「渡したいもの?」
そう言って識神が銀色のアタッシュケースから取り出したのは真っ黒で巨大な40センチ程の魔石だった。
「君の職業を少しばかり機関の方で解析してみたんだが、もしかしたら魔石からもスキルを奪えたりするんじゃないかと研究員の1人が言うものだから試してみて欲しくてね。」
「仮に奪えたとして、良いんですか?その魔石凄く高価なものに見えますが」
「その場合は研究協力の謝礼という事で。ちなみにコレはB級モンスター、ヘルフレイムデュラハンの魔石だよ。君にとっても損の無い話のはずだ」
「強そうなモンスターですね!!いつか戦ってみたい!」
「まったく君は本当に変わっているね……じゃあまあ、試してもらっても良いかな」
「分かりました。【技能略奪】」
そう言いながらカザミは魔石に対して手をかざしスキルを発動する。
「あれ?ん?おお!!」
「どうしたんだい!!」
「多分凄くラッキーなんですけど、その魔石のスキル全部奪えました」
「全てだと?!」
「はい、4つですね」
【大剣術】
大剣装備時にステータス補正、また大剣専用の戦技を使用可能。補正値と戦技の種類はLVに依存する。
【黒炎魔法】
黒炎属性の魔法が使用可能になる。使用できる魔法の種類はLVに依存する。
【身体再生】
身体に負ったダメージを自動で回復する。回復速度はLVに依存する。回復には魔力を用いるため、スキルのオンオフが可能。
【魔法剣】
魔法を剣に纏わせる事ができる。
「情報通りのスキルだ。君の職業は本当に底が知れないな。機関で解析が進んでいるのも技能略奪だけのようだし、残り二つとこれから増えるであろうジョブスキルは一体どんなに凄まじいものなんだろうね?」
そう言いながらカザミを見つめる樹の瞳には魔法陣の様なものが浮かんでいた。
「僕の職業には鑑定眼というスキルがある。視界に入れた人物のステータスを全て覗く事ができる素晴らしいスキルだ。今まで全ての情報を見れなかったのは現在SS級以上になっているギフターと……君だけだ」
「警戒されている様ですが、前にも言った通り俺はモンスターと戦う事にしか興味がありません。人と戦うのは楽しく無いんですよね」
「やはり嘘はないか……本当に面白いな君は」
その後もカザミは樹から強そうなモンスターの話を聞いたりして充実した時間を過ごし応接室を出た。
「カザミ君!!ひどいよ〜!まだお礼もしてないのにバイバイなんて!」
「一之瀬さん?お礼なんて、別に気にしなくて良かったのにあれくらい」
「あれくらいって……私たち4人!命救われてるんですけど!!ね!みんな!」
「「「うんうん!!」」」
ものすごい剣呑で迫る玲華にカザミですら動揺を隠せずああたふたしてしまう。
「じゃ、じゃあご飯でも奢ってもらえればそれで……」
「ご飯なんかで良いの?」
「う、うん!俺とてもお腹が空いてて、直ぐそこのファミレスでも良いかな?」
場所を移してカザミと玲華の友人3人は出張所近くのファミリーレストランにいた。
「じゃあ改めて自己紹介!一之瀬 玲華!E級ギフターで家が剣術道場やってまーす!」
「矢白さん、この度は本当にありがとうございました。
「ボクは片瀬 由来。F級ギフターだよ。一人称は昔からだから気にしないでくれると助かる」
「
「矢白 風見です。皆さんそんなに畏まらないでください。俺も一之瀬さんと同じ日にギフター登録したばかりの新人なので」
「え!!それでシャドウウルフをワンパンかい!」
「由来、声が大きいわよ。でもそうね、登録から数日でレベルもそんなに高くないですよね?失礼じゃなければランクをお聞きしても良いですか?」
「あ、はい。一応Cランクらしいです」
その瞬間4人の女子高生は互いに顔を見合わせるのを一周した。
「カザミ君!!それってちなみに初期ランク?」
「そうだよ、一之瀬さん」
再度顔を合わせる4人に何事かとカザミが身構えていると。
「カザミ君ごめん……私たち少しだけ席を外すね」
「う、うん」
玲華からただならぬ雰囲気を感じ取ったカザミは狼狽えながら応じる。
場所は変わり、ファミレスのトイレにて4人の女子高生は神妙な面持ちでお互いを見つめ合っていた。
「3人とも、今回は引いてくれないかな?」
「玲華?何を言ってるの?あんな優良物件逃すわけが無いでしょう?」
「ボクは別に良いけど、さっきもびっくりしちゃっただけで矢白くんを狙ったりはしないからさ、勝手にしなよ」
「姫奈は?」
「私は……良く分かりませんけど、矢白さんはカッコいいなって思います」
「なるほど……由来はいつも通りで姫奈は少なくとも好意はある訳ね、で!問題は美波ね!」
初期ランクがCと言うのは現在のSSSランクギフターだけだ。また、それはとても有名な話でありSSSランクギフターともなれば国一つ動かせるほどの発言力を持った人物ばかり。そんな大物になる可能性が高く、それを置いても若くしてCランクのギフターというのは世の女性からしたら狙わずにはいられない獲物であった。
「美波お願い!私本気なの!今回は引いて!」
「珍しい……玲華がそこまで男の子に入れ込むなんて……」
「なんかね!本能が言ってんの、アタシにはカザミ君しかいないって!」
「まあ、仕方ないわね。今回のダンジョンでは玲華に負担をかけてしまったし」
「……っ!美波!ありがと!」
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