第2話

カザミがギフターとしての活動を始めて3日が経った。巨大な魔石を売ろうとして聴取にあったりギフターとしての心構えや基礎的な事を教わる講習などとなんやかんやあったものの今日カザミは研修用ではない本物のダンジョンへと足を運んでいた。


「すごいなダンジョン!研修用は草原だったけどこのDランクダンジョンは洞窟なんだ!」


 前回の草原とは打って変わり見えるのは無数に広がる丸い穴。この穴の中の一つがボス部屋に繋がっていると言う情報しか公開されておらず出現から1週間経った今も踏破されていなかった。


「受付の人が凄くおすすめしてたから来たけど強いモンスターはいるのかな?まあ、取り敢えず進みますか」


 瞬間、ギフターの超人的な身体能力にモノを言わせて常人ではあり得ない速さで洞窟を進んでいくカザミ。


「お!モンスター!ぱっと見は狼っぽいけど……雑魚は無視!!」


 モンスターを見ても走る速度を抑えず手に持ったナイフで首筋を一閃、魔石すら回収せず走り続け立ち塞がるモンスターを薙ぎ倒していく。


「この程度のモンスターならジョブスキルを使わなくても師匠から教わった戦闘術とステータスの恩恵でなんとでもなるか」


 狼型のモンスター。カザミは知らないがE級モンスターであるファングウルフは群をなすとD級レベルの危険度をもつモンスターであり、一人前のギフターでも油断をすれば重傷を負いかねない。


「ここがこの道の最奥か……お!強そうなのいる!」


「ガルルッ!」


「楽しくなってきた!身体もあったまってるし最高の状態だ!」


 目の前に佇む巨大な狼はカザミが倒してきたファングウルフの群れのリーダーであるシャドウウルフというモンスターでありD級だが限りなくC級に近い危険度をもつ。


「ガルルッ……」


「消えた!面白いなお前!」


「ガルルッアッ!!」


「危な!!」


 シャドウウルフの特性は影から影に転移できる事であり今も自身の影からカザミの影へと転移して奇襲をしかけた。


「今のは中々危なかったな……」


 少しだけ本気を出そうかな。


「【技能略奪】」


 【技能略奪】

 職業エゴイスト専用技能。

 対象のスキルをランダムに奪う。成功率はスキルLVと相手とのLV差によって変動する。


「お、成功だ」


 【影転移】

 視界に映る影から影へ一瞬で移動できる。また、人物の影を登録することにより、視界に映らなくても転移が可能。移動可能距離はLVに依存する。


「こうやって使うんだ!これは便利だな」


 手に入れたスキルを早速使い、シャドウウルフの影へ転移すると意表を突かれて固まっているシャドウウルフの首を胴体から切り離してしまう。


「コイツも対して強くないや。もっともっと強いモンスターと戦いたいのに。ボスはちゃんと強いのかな?」


 そんな事を考えながら先程とは別の道を進むカザミ。


「あれ?あの人たち負けそうだ」


 松明で照らされた道を進んでいるとシャドウウルフ三匹に囲まれたギフターの集団が目に入る。人数は四人でその全てが若い女性だった。


「姫奈!避けて!!」


「キャァッッ?!」


 シャドウウルフの影転移に対応できずメンバーの1人が肩を負傷してしまう。


「姫奈!!不味い……このままじゃみんな死んじゃう…由来!美波!姫奈連れて逃げて。私が抑える!」


「無理だよ!玲華!いくら玲華でもこの数は……」


「大丈夫だから!外に出て助けを呼んできて、早く!!」


「…………分かった!急いで呼んでくるから!!」


 そう言うと肩に傷を負った女性を背負い一目散に出口を目指す2人。1人残された女性は腰に携えた刀身の長い日本刀を鞘に戻すと。


「一之瀬流抜刀術・白夜!!」


 向かって来たシャドウウルフにカウンターの居合い切りをぶつける。


「もー!!また影に逃げられた!!」


 既のところで影に潜られ攻撃を避けられてしまう。


「やば!完全に囲まれた!」


「ねえ、コイツらもらっても良い?」


「え?!君だれ!ていうかどこから現れたの!」


 流石は師匠直伝の隠密術だ。全然気づかれてなかった。


「それは後にしてさ、どうするの?今にも向かって来そうだけど」


「あ、ああ。良いけど倒せるの?シャドウウルフだよ?」


「コイツら大して強くないんだよね……あんまりやる気起きないけど経験値にはなるからなぁ。やるか」


 そう言うとカザミは自身の影からシャドウウルフの影に転移すると手に持ったナイフで首筋を一閃する。


「まずは1匹……」


 続けざまに目にも止まらぬ速さでシャドウウルフの首に抱きつくとそのまま首を捻って瞬殺。


「もう残り1匹か、つまんないの。お前……生きてたい?生きてたいなら俺に従え」


 仲間が一瞬で殺されたシャドウウルフは怯え切っており、カザミの前で首を垂れていた。


「分かった。どうせ殺してもつまんないし。これでも経験値は入るみたいだしね」


 シャドウウルフに向けて手のひらをかざすと。


「【絶対服従】」


 【絶対服従】

 職業エゴイスト専用技能。

 自身に従った生き物を眷属化し好きな時に呼び出せる。

 また眷属専用の異空間に住まわせておく事もできる。

 眷属にはステータスに補正がかかる。


「完了。レベルもしっかり上がってるな」


 矢白 風見

 年齢 16

 性別 男性

 職業 エゴイスト

 称号 イレギュラー

 レベル 5


 体力 D

 腕力 D+

 防御力 D

 速さ D+

 魔力 D

 運 SSS

 《職業技能》

 【技能略奪】 LV1

 【利己主義】 LV1

 【絶対服従】 LV1

 《特殊技能》

 【共鳴】

 【経験値10倍】

 【成長値10倍】

 《略奪技能》

 【影転移】  LV1

 《眷属一覧》

 【シャドウウルフ】LV13


「送還……っとこれで異空間に送れた訳か」


 カザミがそう言うとシャドウウルフは細かい粒子になって消えていく。


「え!え!え!マジで君なにもの?!シャドウウルフ2匹瞬殺で1匹はどっかへやっちゃうし!凄すぎるんだけど!!」


「あ、ああ。俺は矢白 風見。16歳。3日前にギフターになったんだ。よろしく」


「アタシは一之瀬 玲華!16歳!ていうか3日前?!マジ!私も〜!誕生日だったし友達もギフターだったしノリで?みたいな」


「偶然!俺も5月6日が誕生日!」


「え!え!マジ!凄くないこれ!」


「16年生きて来て同じ誕生日の人には初めて会ったよ」


「だよね!だよね!てかさカザミ君なんでそんなに強いの?!3日前にギフターなったばっかなのに」


「俺は特殊技能があったから小さい頃、家庭教師に戦闘訓練をつけてもらってたのとつけた職業が結構強いみたい」


「特殊技能?!良いな〜。ギフターの憧れじゃん」


「それはそうと……俺さっきの状況少しだけ見てたんだけどさ、友達のところ行かなくて良いの?」


「あ…………」


 

 

 


 


 


 


 


 


 


 


 

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