第7話

一族によって望まない結婚をさせられ、挙句に好きでもない男との間に子どもを作る事を拒否し続けた母は自ら進んで子どもが出来ない体になった。


「そんな……」


そこまで話を訊いてようやく事の矛盾に気が付いた。


「え……だったら私は? 私は母の子どもじゃないってこと?!」


今まで当たり前のように信じて来た母の存在が危うく感じられた。


「いいえ、カラさんはスイ様の娘です。──ただし遺伝子上は、と注釈がつきますが」

「遺伝子上? ……それって」

「スイ様は子宮摘出手術を受ける前に幾つかの卵子を冷凍保存していました」

「!」

「お解りですね? つまりカラさんはその取り出されていた卵子とスイ様が厳選し選び抜いたとある男性の精子とを掛け合わせて作られた娘ということです」

「……」


(そんな……そんなことって……)


私は当たり前のように愛し合った夫婦から生まれて来た子どもじゃなかった──その事実が酷く深く心を抉った。


「出来る限りの受精卵を作り、それを何人かの代理母の子宮に移しました。しかし上手く子宮に着床し出産に至るまで育ったのはカラさんただおひとりだったのです」

「……」

「──と、此処までは割とよくある代理出産の話であります。しかしスイ様が行った出産は一般とは違った点が幾つもあるのです」

「……一般とは違うって……何よ」


自分の生まれた経緯の真実が衝撃的過ぎて上手く頭が回らない。だけどそんな私に構うことなく真ん中の男は淡々と話を進めるのでいちいち大袈裟に喚き叫んだり出来なかった。

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