第6話
そんな私を少し気にかけながらも真ん中の男は話を続けた。
「スイ様はガンマテクノロジー社の現総帥の奥様だった方です」
「は? ガンマテクノロジー社って……総帥の奥様?」
(何? ちょっと頭がごちゃごちゃして……)
ガンマテクノロジー社というのはこの国の科学や工業の技術を進化、発展させる分野においてはパイオニア的な存在として古くからある巨大企業の総称だ。
(その企業の……現総帥の……?)
「元々はスイ様が総帥の任を担っていて現総帥はスイ様の婿養子に迎えられた科学者でした」
「え……じゃあその婿養子の科学者っていう人が私のお父さんってこと?!」
「いいえ、それは違います。あなたは現総帥、
「はぁ?……どういうこと」
「スイ様と貴正様の婚姻は創始者一族であるスイ様のお父上が決めた政略結婚でした。元々頭脳明晰な理系家系だった三澄家にとって優秀な頭脳を持った子孫を残すための政略結婚は慣例事項でした」
あぁ、よくある話だ──と、私は何処か余所事のようにその話を訊いていた。
「しかしスイ様は殊の外貴正様を毛嫌いされまして、形式上夫婦になりはしましたがとても世継ぎを儲ける仲ではありませんでした」
「……」
「三澄一族、貴正様においては何としてでもスイ様に世継ぎを生ませたいと躍起になり、時には強引な手段を取ったりすることもありました」
「何それ……酷い」
少しずつ私の中で得体のしれない怒りが沸々と湧いて出て来るのを感じた。
「そんな周りの押しつけがましい思惑に嫌気が差したスイ様はとうとう自ら子どもを作れない体になってしまったのです」
「……え」
(子どもを作れない体って……)
「スイ様が懇意にしていた医師の手によって子宮を全摘出されてしまったのです」
「?!」
(嘘っ!)
その余りにもハード過ぎる話の内容に絶句するしかなかった。
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