【変遷する風景】—僕が強くなる理由は君の隣に立つため—

@Ta-1

第1話 突然の知らせ

母の静かな一言が、日常の空気を突き破った。


「カヅキ君、亡くなったんだって。自殺かもしれないって」


カヅキ——。中学の野球部で一緒だったあの友達の顔がぼんやり浮かんでくる。けれど、鮮明な記憶としてよみがえるには時間がかかった。


「カヅキって、あの野球部のカヅキ?」


その問いかけに、自分の声が微かに震えていることに気づく。


母との会話がどんな風に進んだのか、正直、あまり覚えていない。ただ、一つだけ確かなのは、自分の中に消えない重たい罪悪感が残っていることだ。


土曜日のお通夜の話を母が持ち出した時、僕は思わず口をついて出た。


「友達と遊ぶ約束があるから、行けないかも」


けれど、心の奥底で叫んでいる声があった。


——あの時、もっと違う選択ができていたら、僕はカヅキを救えたのかもしれない。



卒業してから、カヅキに会ったのはわずか3回だけだった。


最初の再会は、高校進学後の夏。地元の駅で偶然カヅキを見つけ、声をかけた時だ。


「よお、元気?またみんなで飯でも行こうぜ」


その瞬間、カヅキの表情が一瞬曇った気がした。


「中学に戻りたいって思う時があるんだよな…。お前はまだ野球やってるの?」


「いや、辞めたんだ。新しい環境に馴染むのも悪くないと思ってさ」


そう言ってその場を去ったけれど、心の奥には違和感が残った。


次に会ったのは高校2年の夏。桜木町で彼女と歩いている僕を、たまたま見かけたカヅキが声をかけてきた。


「テツ、久しぶりだね。もしかして彼女?」


「そう、ナオっていうんだ」


その時も、何かが引っかかるような気がしたが、気にせず別れた。中学の頃より少し元気がないように見えたカヅキ。でも僕は、もうそこに関心を持てなかった。


最後に会ったのは高校3年の夏の終わり。同じ電車に乗っているカヅキを見つけたが、僕は声をかけなかった。


カヅキは変わっていない。だけど僕は変わった。目が合った気がしたけど、無意識に目をそらしていた。


本当は、変わった自分を、変わらないカヅキに見せたくなかったのかもしれない。


でもそれが本当の理由ではなかった。


あの時、友達が友達でなくなった瞬間だった。


——でも、この一瞬の選択が、僕の人生を大きく変える後悔になるとは、この時は思いもしなかった。

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