異世界転移した男
ナカナカカナ
第1話 異世界の信号
はぁ……はぁ……はぁ……どうやら
オレか? オレは……普通の人さ。本当になんの事はない普通のな。
ただアンタらと違う世界……パラレルワールドってヤツか? 巨大なマシーンが作り出した転移装置でこちらの世界に連れて来られた、今で言う所の異世界転移者ってヤツだ。
この祭だからハッキリ言わせてもらう……アンタらは全員、狂ってる! 狂ってるぜ!?
ヤツら……
ああ。ヤツらってのは、転移装置を作ってオレを連れて来た連中のことだが……突然この世界にオレを連れて来て、なんの了承も得ずに色々とオレのことを調べやがった。
要は『本当に異世界から来た人間なのか?』調べる為だろうな。ヤツらは色々と聞いてきたよ……
まずは言葉だったな。そこは、なにも問題はなかった。
オレもアンタらも『日本語』を喋ってる。意思の疎通に苦労はしなかった。3日くらい会話を重ねて言語に違いがないことが分かった。
次は地理や歴史の相違点だ。正直そこも違いがなかった。オレが住んでる地名は存在したし、歴史も……まあ、詳しいわけじゃあないが、違いが確認出来なかったんだ。
連中は焦ってたよ。『コイツ……本当に異世界から来た人間なのか?』てな。
ふんっ……突然連れて来られたオレからしたら、どうでもいい事だったけどな。
そして最後は街中を歩かされたんだ。『元居た所との違いはないか?』ってな。
そこでオレは知ってしまったんだ。アンタらとの違いをな……
最初見た時は……あ、足が震えたよ。
────────
「は、はうあっ!」
オレは交差点の横断歩道の前で愕然とした。
「ど、どうした!? なにか違いを見つけたか!?」
オレの監視役の男は身を乗り出して問いただして来た。
「し、信号機が……」
「信号機がどうした!?」
「み、緑色だ」
「な、なに?」
「信号機だ! 黄色と赤色はオレの居た世界と同じだ! だがここのは緑色だ。オレの居た世界では『青』だった。信号は『青、黄、赤』だった!」
「そ、そうか。だがこの世界でも信号は『青、黄、赤』だぞ」
「な、なにぃ!? だったら……そうか! 『色の認識の違い』か! オレは緑と青の認識が逆の世界から来たってことか!?」
「いや……うーん……」
「アンタらは……そう! この空の青さを緑と認識してるわけだな!?」
「い、いや……それは青だ。山は緑だし、空は青だ」
「? じゃあ……え? あの信号は? 緑信号ってことだろ」
「いや……アレは青信号だ」
「ん? は? アンタはアレが青色に見えてるのか?」
「いや……緑だが……その……青信号なんだ。り、理由は知らんがアレは青信号なんだ」
「じゃ、じゃあアンタらはアレが緑だと知りつつ『青信号』って呼んでるってことか!? な、なんで、そんな……くそっ! アンタら、この世界の人間は狂ってるぜ!」
オレは赤信号にも関わらず恐怖と不安に駆られ車が往来している道路に向かって駆け出した。
「あ! オイ! 逃げるな! そんなどうでもいい相違点で発狂するんじゃない!」
────────
まあ、そいうわけで逃げてきたのさ。
な?
アンタら全員イカれてやがるのさ。
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