先生お誕生日おめでとうございます
西悠歌
第1話
私たちの学校にはテストを作るのが下手………なのかもしれない先生がいる。1問1問の配点が高くて問題数も少なく、みんなすぐに解き終わってしまう。まあ簡単だからありがたくもあるんだけどね。
そんな先生だけど生徒からの人気は高い。優しいし、話しやすい感じがいいんだと思う。提出物を忘れた時とかにも明日でも大丈夫だよって言ってくれて、しかも普段真面目にやっていればそこまで評価を下げないでくれる。
そのあたりの行動は人によって評価が分かれるかもしれないけど、私は間違いなくこの先生が好きだ。
そんな先生は期末テストの最終日に誕生日を迎える。ちなみに年齢は秘密らしくて、以前先生に訊いた子は80歳だって〜と言って帰ってきた。上にサバ読むの珍しいね、と盛り上がったのをよく覚えている。
この前の月曜日、クラス全体でこの先生を祝いたいねという話になった。花束でも買ってこようか?という案が出た時学級委員的な役職に就いている女子が言った。
「先生のテスト、みんなすぐ解き終わるでしょ?だからあの答案用紙にメッセージ書くのはどうかな?」
答案用紙?確かに先生は見てくれるだろうけど、テストに影響しないかな?ふざける場面じゃないって怒られないかな?
「いいと思う!」
「どうせだったらみんなで繋げたら一つの絵になるみたいなのはどうかな?」
男子の方の学級委員もそんな事を言う。やっぱり頭いい人たちは発想がすごいな。
「あ、それいいね!だったら裏面のほうがいいかな?」
「じゃあみんな解答の最後に『裏へ』って書いとこっか。」
「オッケーイ!」
「あと番号もつけようね。並べるの大変になっちゃうから。」
「そうだね。」
私の心配をよそに話はとんとん拍子に進んでいく。でもまあ、先生が喜んでくれるならいいかな。
私はテスト勉強の休憩がてらイラストを練習する日々を送った。そしてついに当日。
「よって……であると言える。よし解答終了!」
答案用紙を裏返して絵の一部を描いていく。練習の甲斐あって手はスラスラ動き、あっという間にこれだけ見てもなんなのか分からない絵が完成した。
ちなみに今日は1人休みがいるけど、お誕生日が誕生日になってしまうくらいなら伝わるから大丈夫だろうという結論になっている。
周りのみんなも用紙を裏返して絵を描いている気配がした。試験監督の先生は何も言わなかった。多分気づいてはいたんだろうけど。
そしてテスト返しの日。教卓に立った先生は答案用紙を机上で揃えながらこんな事を言った。
「みんなありがとう。私の誕生日、祝ってくれたんだね。でもちょっと不思議なことになってたよ。」
そして全ての紙を並べた写真を見せてくれる。
そこには大きなケーキのイラストと、『生誕日おめでとうございます』の文字があった。
そして学級委員の2人だけが目を見開いていた。
「みんな、あれ本気だったの?」
先生お誕生日おめでとうございます 西悠歌 @nishiyuuka
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