ほしぞらのした、ちいさくて、やさしい、奇跡

追求者

星降る夜の奇跡



 ある星降る夜、とある静かな村に住む少女、美咲は、いつもと違う星の輝きを感じていた。


 生まれてから移住も引っ越しもしたことのない彼女は、村では数少ない子供として、村民から大事に育てられてきた。そんな彼女は星空を見上げながら、心の中で願い事を唱えた。


「どうか、私の大切な人たちが幸せでありますように」


 その大切な人というのは、具体的に決めているわけでもなく、ただただ大切な人という子供ながらの純粋でぼんやりとしたものであった。


 その夜、美咲は不思議な夢を見た。夢の中で彼女は、星の精霊と出会った。彼女は以前に星の精霊に会ったことはなかったが、直感的にそれが星の精霊だと判断した。その精霊は美咲に微笑みかけ、


「あなたの願いを叶えるために、特別な力を授けましょう」


 と言った。その言葉の意味を美咲は理解できなかったが、とにかくやさしい声だなぁと思っていた。


 目が覚めると、美咲は手のひらにちいさなかけらを握っていた。いつ、どこから湧いて出てきたのかもわからないその”星の”かけらは、まるで生きているかのように輝いていた。美咲はそのかけらを使えば、きっといいことが起こると信じて疑わなかった。


 彼女はまず、病気で床に伏している老人の家を訪れた。この老人は若い頃、画家として世界を転々としていた過去を持っていて、美咲はよくその老人から村の外の世界について聞いていた。星のかけらを老人の枕元に置くと、星のかけらが砕けて老人の寝室一杯がそのかけらの粉で満たされ輝いていた。老人はたちまち元気を取り戻した。


 次に、美咲は貧しい家族のもとを訪れ、星のかけらをその家族に渡した。農家を営むその一家は、ここ数年不作が続いており、生活が困窮していた。かけらをもらった翌日、星のかけらは消えてしまっていたが、畑一面に輝く作物が実っていた。その家族はその後も次々と幸運に恵まれ、生活が豊かになっていった。


 美咲は次々と村の中で困っている人を知っては星のかけらを使い助けていった。美咲の行動は村中に広まり、彼女は「星の少女」として知られるようになった。村の人々は美咲に感謝し、彼女の優しさを称えた。


 村の外からは、不思議な力のあるを求めてやってくる人がいた。しかし、かけらはそう言った人には奇跡をもたらさなかった。


 そして、美咲は星のかけらを使い果たしたが、村の人々の心には彼女の優しさが永遠に残った。


 星降る夜、美咲は再び星空を見上げ、心の中で精霊に、そして村の人々に感謝の気持ちを込めてもう一度願い事を唱えた。











「どうか、私の大切な人たちがいつまでも幸せでありますように」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ほしぞらのした、ちいさくて、やさしい、奇跡 追求者 @pursue

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ