第27話 これが私が考えた新しい魔法道具ですわ

 私、昨日、アリーナと一緒に魔法道具店に行きました。そのときに、ウインドファンという風の出る新製品を見たのですが……。それを見てからというもの、私の中で対抗意識がメラメラと燃え上がり続けています。


 そして今日です。暑いなか日傘を差して私はラボットさんの工房を訪れました。するとハリーが工房にいて、ラボットさんと仲良くお茶をしていました。珍しい組み合わせですね。

 挨拶をすると、二人が温かく私を迎え入れてくれました。


「お二人でお茶を飲みながら、何のお話をしていましたの?」

 ラボットさんが先に反応しました。


「仕事の話だよ。な?」

「ええ、そうですね。ちょっとドリルの話をね」

「ふーん、なんだか怪しいですわね。男性が何かを隠しているときの顔をしていますわ」


 二人ともぎくりとするのが面白かったです。


「安心してくださいませ。私は淑女ですから、深入りして聞いたりはしませんわ」

 私は空いている椅子を作業テーブルのところに持っていきました。そして、淑女らしく上品に座ってから二人の男性を見ます。

「で、お二人でどんな内緒話をしていましたの?」


 目を輝かせて聞いてみます。


「おいおい、淑女はどこにいったんだ」

 とラボットさんがツッコミを入れてくれました。てへ、と笑顔を見せます。


「一回は聞いてみた方が場が盛り上がるかなって思いまして」

「本当に真面目な仕事の話だけだよ」

「そうでしたのね。ではラボットさん、ハリーとのお話が終わったら、私の話も聞いてもらえますか?」

「ああ、いいぞ。というか、もうハリーさんとの話は終わったよ。クルクル嬢、新しいドリルの開発依頼が来たぞ。一緒に作ろうぜ」

「新しいドリル?」


 ラボットさんが黒板にあるドリルの図面に線を付け足しました。何やらドリルの持ち手が二方向に分かれましたね。


「こんな感じで持ち手を伸ばしてな。二人で使うんだよ。そんでドリルを大型化してほしいって依頼がハリーさんから持ち込まれたんだ」

 ハリーが補足をしてくれます。


「現場監督から採掘の効率をあげたいって相談があってね。どうにか大型化してもらえたら嬉しい」

「なるほど。とても面白そうですわね。ラボットさん、これからすぐに取りかかりましょう」

「お、話が早いな。さすがクルクル嬢だ」


 ラボットさんがチョークを置きました。そして、ハリーさんを見ます。


「今日から着手できるとなれば、明日にでも試作機を見てもらえるかもしれない」

「では明日、今日と同じ時間に伺わせてもらいますね」

「ああ、待ってるぜ。で、こっちの話はついたが、クルクル嬢の話っていうのは? ハリーさんも一緒に聞いてもいい話か?」


 私はハリーを見ました。ハリーが優しい表情を見せてくれます。


「ハリーは口は堅いですか?」

「もちろん。口が軽い人は貴族社会では生きていけないからね。ここで聞いたことは絶対に誰にも話さないよ」

「では、お話しましょう。実は私、新しい魔法道具を思いついたのですわ」

「「新しい魔法道具?」」


 二人の興味を引くことに成功したようです。二人同時に前のめりになりました。


「発想のきっかけになったのは、昨日、魔法道具店でウインドファンという新製品を見たことですわ。お二人は既に見ましたでしょうか?」


 ラボットさんが「俺も昨日、見たなぁ」と言います。


「なんつーか、商品としては面白いっちゃ面白いんだが、構造的には一つも面白くないというか……。業界人としては物足りないな。子供が思いつきで作った製品って感じだ」

「私もラボットさんと同じ感想を抱きましたわ。風の魔石を購入して自分で魔力を込めれば風を出せますから――。なんというか、わざわざ魔法道具を買う理由がありませんわよね」


 だよなーとラボットさんが同意してくれます。ハリーはどうですか、と聞いてみました。


「俺は2日前に見たよ。貴族の間で少し話題になっていてね。見た目が少しおしゃれだったのもあって、これは日常生活が少し変わるかもなーって話をみんなでしていたね。ただ、値段がね……」

「あら、スノーグローブ家からしてもお高いですか?」

「何か特別な理由がないと買えないよ。うちは理由なく贅沢はしないって厳しい父から言いつけられているからね。ただ、うち以外だと、見栄でウインドファンを買っていた貴族や富豪はけっこういるって聞いているね」


 さすがは富裕層って感じです。見栄だけであの高額な製品を買うのは、庶民や貧乏貴族にはありえない考え方です。


「ハリー、ラボットさん、実は私、あのウインドファンを見て以来、心の中でメラメラと対抗意識が湧いてきていまして。あれと真っ向から勝負する新たな魔法道具を考案してみたんです」


 ラボットさんに黒板を使ってもいいかを聞きました。

 黒板にはドリルの図面が描かれていましたが、もう消してもいいそうです。既に従来のドリルの図面は紙に描き起こしていますし、新しいドリルについては持ち手が伸びたくらいですから黒板に残しておくほどではないとのことです。


 私は黒板消しで黒板を綺麗にしました。そして、新しく考えた魔法道具の絵を黒板に描いていきます。

 その絵は、前世の世界では誰もが知っているおなじみのものです。ですが、この世界の人たちはまだ見たことがないものです。


「これが、私が考えた新しい魔法道具ですわ」


 それは風を発生させて涼むことができる魔法道具――。つまり、扇風機ですわ。

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