恋の快速運転はどっちにする?
海来 宙
一. キューピッド
私は十八歳の高校三年生、
いや、電車がすべり込む前に神様がやってきた。もちろん電車を走らせる鉄の線路の上じゃないし、現れた方向も違う。たぶん神様らしく雲から降りてきたんだと思う。それが〝たぶん〟なのは、遅刻が迫る私に空など見る余裕はなかったためで――。
髪が
キューピッド、そうそうキューピッドは天使じゃないし女神でもない。あと私は、ホーム上に数センチふうわり浮かんだ神様を人間によるコスプレだとはとても思えず、本物だと信じて疑わなかった。
┈┈まもなく、一番線に普通電車が参ります。
ここは現実の
しかし、私はうなだれて神様に答えた。
「私、好きな人が学校にいないから――」
私が恋いこがれる男の子、
ところが、キューピッドの神様は人間にはとても想像できない提案をしてくる。
「えっ、これ、
駅のホームに現れた私の部屋の机ほどもある漆黒の厚紙。各
てか恋を成就って、双六上で芹野家の最寄り駅にでも行けというのだろうか。私はまだ理解できていない双六と賽子に手を伸ばす。すると神様は、『「あがり」の駅に到着すれば恋がかなう』と言って長い睫毛を下ろし、さらに一つ補足して一気に弱まる蛍の光――、
あっという間に神様も何もかも消失し、私は駅のホームに独りたたずんでいた。ううう、今のはいったい何だったのか。
┈┈まもなく、一番線に普通電車が参ります。
おっと、同じアナウンス。私は時間が戻ったかと思ったけれど、寝坊しても忘れなかった腕時計の蒼い文字盤を確認すると十分ほど経っている。次の電車らしい。
私はいいかげん学校に向かわなければとその電車に乗り、えっ、あれ?
遅い時間帯のせいか混雑がやや甘い電車の中、私は双六も賽子も失ったはずが――いやそれは間違いないのだが、脳内の
ええぇえーっと、私の恋の双六でいいんだよねこれ。あと神様、『賽子の目のぶんだけ段落も先に進むかどうか選べて、どちらかに決めたら「あがり」まで貫くこと』って最後に言ってたけど……、あの、どういうこと?
背の高い
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