BLエロゲー世界に転生したけど、ノンケなので全力で逃げます

第1話 VSギャル

　あれはオレが入学して1ヶ月経った頃だったな。忘れ物をして教室に行ったら、主人公と攻略キャラその１のギャル男が居たんだ。あ、この先個人情報保護的な意味で名前は出さないからな。

「まぁ、私は全シナリオ遊んでいるから大丈夫だよ」

　助かる。ただな？　アイツら教室でエロゲってたんだ。

「エロげる？　……あ」

　察してくれて助かる。正直見れたもんじゃなかったぞ。音と匂いが今でも思い出せてしまう。それに加えて気まずい事に、ギャル子も居て一緒に目撃してしまったんだ。

「うわ、教室で寝取られているの見たんだ」

　そうそう。当然ギャル子はブチ切れて教室に入ったんだが、ギャル男は開き直って罵倒したんだよな。「お前はオレの顔だけ目当てだ」「こいつとは真実の愛に目覚めている」「お前の作るくぞ不味い弁当が嫌だった」とかなんとか言って。

「男と恋愛なんて気持ち悪いって教室で言うキャラなのにね」

　多分製作者が変態なんだろうよ。その後も見せつける様にエロゲし始めて、ギャル子は泣いて逃げちゃったんだよね。

「で、お兄ちゃんは思わず追いかけちゃったと」

　すまん。その子おっぱい大きくって……。

「最悪だなぁこのおっぱい魔人。それで？」

　うん。まぁ追いかけたら公園に居てさ、どしたん？　話聞こうか？　って色々と聞いたわけよ。

「下心ありすぎる」

　ないよ。

　それでまぁ色々と聞いていたら、ギャル子も何となく気付いていたんだってさ。デートの約束をすっぽかしたり、電話したら妙に息が荒くて変な音が聞こえたり、よく主人公くんと二人で帰ったり……。

　相手が男だったから浮気だとなかなか思わなかったらしい。まぁ、弁当の中身をこっそり捨てられているのを見て一気に疑ったらしいけど。

「うわぁ。それでお兄ちゃんはどうしたの？」

　まぁ、このままだとギャル子がどうなるか知っていたからな。流石に可哀そうだと思って色々と相談乗ったんだよ。

　ギャル子って原作で書かれていないけど兄弟の多い大家族みたいで、いつもご飯作っているらしい。だからその分大味になっているみたいだ。オレは美味しいと思うけど。

「食べたんだ」

　食べたよ。

　それでまぁ、ギャル子もギャル男とやり直す気は無いみたいだけど見返してやりたいみたいでさ？　そこで俺の出番って訳だ。

「そういえば、お兄ちゃん料理上手だったね」

　おう！　この世界顔面偏差値高いから、見た目以外で能力高めないとモテないと思って色々と頑張ったからな！　高校に入って全部無駄になったけど。

　ただまぁギャル子の力になれたから結果オーライだ。きっちり仕返しできたしな。

「そうなの？」

　そうなの。

　家庭科の授業でギャル子作った料理食べたギャル男が、それを知らずに「こんな美味い料理作れる女の子と結婚したい」って言ったんだよ。主人公くんとの関係を隠す為の戯言かもしれんが。

　しかしそこでギャル子が自分が作った事と「お前みたいな浮気する奴、誰が結婚したいんだよ」ってクラスメイトの前で言って大恥かかせてたよ。カースト上位だったけど一気に落ちて誰にも相手されなくなった。

「そうなんだ……」

　そうなの。

　それからはギャル子は家庭科部に入って他の娘と楽しく料理してるよ。ギャルって事でみんな敬遠しているけど、本当は良い子なんだよな。

「へぇ……ところで、お兄ちゃんはその子とまだ交流あるの？」

　うん、あるよ。

　時々この家に来て料理の味見を頼まれるんだ。でも俺全部美味いしか言わないから役に立ってないと思うんだよね……その辺どう思う？

「まぁ、良いんじゃない？　それにしてもお兄ちゃんモテてない？」

　いやいやモテてないモテてない。

　俺も最初はギャル子に好かれているのか？　と思ったけど「しばらく男はいいや」って言ってたし、今はバイトと家事に専念するってさ。

「ふーん」

　――ピンポーン。

　お、噂をすればギャル子じゃん。ちょっと行って来る。

「よ！　今日も肉じゃが作って来たよ」

　助かる。でもあまり無理するなよ？　部活とか家の事で忙しいだろ？

「だいじょーぶ！　あーしが好きでやっている事だし」

　そうか？　まぁ俺もお前の料理大好きだからいつも助かってるし。ありがとうな！

「……うん」

「絶対に好かれているじゃんアレ」

「そう言えば、例のギャル男。親が元々料理しないからコンビニ弁当ばかり食べているんだっけ？」

「それで体調崩しがちで、主人公くんに捨てられたとか」

「本来はギャル子がそうなる展開の筈なのに、ね」