ヘイリー・フォードの事件簿
緋色ザキ
一章 サーカスサークル殺人事件
第1話 早朝の来客
ドンドンドンと強く戸が叩かれた。
その音でエイザンの意識は夢の中から現実へと引き戻される。
上半身を起こし、時計を見ればまだ八時。早朝に一体全体誰がなんの用であろうか。
のそりと起き上がると、天然パーマのもじゃもじゃな髪を乱暴にガシガシと掻いて扉の方へと向かう。
大した用事でなければ一言くらい恨み言をぶつけてやる。そんなことを思いながら扉を開ける。すると、不意に胸元が掴まれ、ぐいっと身体を引っ張り出された。
そのまま部屋の外へと出るかたちになる。前に重心が傾いた状態でつんのめりそうであったが数歩足を出してなんとか耐えた。
「なにするんだ、よ?」
ぶつけようとした怒気を帯びた声は、しかし最後まで勢いを保てなかった。
五人ほどの男女がエイザンの周りを囲んでいたからである。
何人かは顔見知りであった。
エイザンの所属するサーカスサークルの部長、リネ。エイザンの通うフォード魔法大学で女性人気の高さで話題のイケメン、ニース。あとの三人の男女は知らない顔だ。
なぜかみな、一様に険しい顔つきでエイザンを見ていた。
「な、なんだよ」
「縛れ」
ニースがそう呟くと、エイザンの左右の地面が隆起し、エイザンの脛のあたりまで土に覆われる。
足を動かそうにもまるで接着剤のようにかちこちに固まっており動けない。 なんとか迎撃しようと辺りを見渡したが、武器になりそうなものはなかった。
「残念だが、この一帯にお前の魔法で武器にできそうなものはなにもない。諦めてお縄につくんだな」
エイザンが知らない人間のうちの一人、眼鏡をかけた短髪の男がそう高らかに宣言した。
「待ってくれ。何のことだよ?」
それを聞いたニースが鬼の形相でエイザンに詰めよって襟を掴んだ。
「しらばっくれるんじゃねーぞ。シャーディーを殺しておいて」
その言葉にエイザンは驚愕の表情を浮かべたのであった。
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