第66話 レスキュー!
◇
大変だ、湖を泳いで縦断するウキタ君の様子がおかしい!
さっきまでは大きな水飛沫を上げながら泳いでいたのに、今はいっこうに前に進まず、もがいている様子からアクシデントが発生したのだろう。
八丈島から泳いで参ったらしいだけに、身体が悲鳴をあげたのかもしれない。
幸いにして彼の後ろには、スワンボートを漕ぐキタバ先生がサポートに付いていることで事無きを得ているが……ちょっと人員が足りないぞ?
すぐさま駆けつけるべくマツダイラ君の先導で湖岸まで降りてきたが、沖まで結構距離がある。
猫の手でも借りたい状況だけあり、なにか打つ手はないかと歯痒い思いをしているその時だ。
こんなこともあろうかとでもいうのか、スワンボートから飛び出したのは、一匹のラブラドールレトリバー。
茶太郎君、君も新人オリエンテーションに参加していたのか……しかし、まだ手は足りてない状況下であったが、ウキタ君のところへ泳いで駆けつける救いのヒーローってものがいるんだよ。
水飛沫が2つ、沖に向かって進んでいる。
湖岸には乗り捨てられた5人乗りのタンデム自転車、脱ぎ捨てられた学校指定のジャージも5人分、そして水着姿のウィラ、カズサさん、ヒナコの姿が……おい、寒くないか?
ビキニ姿のウィラは、ドイツクォーターだけにスラッとした長い手足、そして程よいバランスの美ボディが最高だ。
同じくビキニ姿のカズサさんは、健康美そのものを体現しているガッチリした脚が、とてもよく映えるのだ。
クソチビポメ柴のヒナコは……おい、スク水はちょっと犯罪チックな香りしかしないから早く服を着ろ!
そもそもお前、泳げないだろ!
「トラチヨ、ええとこに来たな。ナギとジェニーが救援に行ったから安心しぃ?」
「アメリカ人らしいっすね、飛び込んだらヒーローっすよって言ったら、二人とも湖に向かって全力ダッシュしてたっす」
「……カスガ、あの2人に任せれば大丈夫」
「なるほど、流石だな……ところで、湖岸で遊んでいるお前らは、なんで脱いだ? そもそも水着はいつ用意したんだよ!?」
「そらな、せっかく湖があるんやったら、水着を着込んで来るのもええやろ?」
「ちょっと寒いっす」
「……似合う?」
なるほどね、おかげでウキタ君のことは、なんとかなりそうだけど、ビーチボールを片手にそれを言っても説得力なんてないぜ?
そしてクソチビポメ柴のヒナコ、お前は浮き輪まで用意してあざといぐらいによく似合っている。
よく似合いすぎて危ないニオイしかしないから、変な性癖の人に見られないうちに、早くジャージを着ろ!
ともあれウキタ君は、キタバ先生、茶太郎君、ナギ姐、ジェニファーによりレスキューされたことで一安心。
大事に至っていなければいいのだが……ところで、なんで湖岸にネットが設置されてるんだ?
なに、今から勝負しろだって?
おいおい、今度は肌寒い中でビーチボール編かよ!?————。
◇
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