第64話 レンタサイクル
◇
キタバ先生の計らいにより、バーベキュー場の近くにあるレンタルサイクルを教えてもらった俺たちは、さっそく向かってみた。
しかし、いざ着いてみれば自転車と言えるものが殆ど残っていない。
受付の人に聞いたところによれば、東方共栄学園の先生方が、パトロール用に借りていったらしく、1人乗りの自転車、いわゆるママチャリ系は殆ど貸し出し中とのこと。
代わりにタンデム自転車ならば、いくつか用意しているようなので、そちらを使ってみようという流れになった。
さあ、この中(余り物)から好きなやつを選べ。
そんな訳で1番良さそうなタンデム自転車の中で、特に目を引くのが6人乗りのもの。
見た目は自転車というよりもエンジンのないトゥクトゥクのようなもので、なかなか良さそうなものの男性陣の人数的に、定員オーバーである。
他には5人乗りの長いホイールベースのタンデム自転車、あとは2人乗りないし、3人乗りのモデルだ。
船舶移動、セグウェイ、潜水艇、そしてバーベキューで予算を圧迫したことにより、そう多くの台数を借りることは出来ない。
そうなれば、その中で1番我々にマッチするものを確保したいのだが……ああ、選ぶ順番で女性陣と揉めてしまったんだ。
ここに上様などおられるはずもない、者共、出会え出会えとばかりに男女平等パンチの一触即発、リアルファイト態勢に移行した俺たち男性陣は、数の有利を活かして戦意喪失を狙ったが……あえなく敗北した。
ああ、上様ことマツダイラ君は、顔芸を披露してくれた……ただそれだけ。
ウキタ君は、万一の為に準備運動を入念に行っていた……いや、水泳するわけじゃないからね?
潜水艇カルテットは、我関せずの態度を貫いた紳士。
そして俺は、問答無用とばかりに主に合気道等の武道の達人であるウィラに、思い切り投げ飛ばされた直後、カズサさんの絞め技を食らい、なにも出来ないまま圧倒的なコンビネーションの前に鎮圧された。
一方の兄貴は、ナギ姐に間接技を決められて撃沈。
ああ、やっぱり俺と兄貴それぞれの前前世、前世の嫁に敵わないって訳だ。
逆らってしまった俺たちは、木の上に逆さに吊るされてタイムロス。
マツダイラ君は変わらず顔芸を披露し、ウキタ君は入念に準備運動を繰り返している。
日和見を決め込んでいた潜水艇カルテットは、俺と兄貴を救助するために駆け寄り、ロープを解いてくれた。
さて、ひどい目に遭ったが、幸いなことに俺たちの乗るタンデム自転車は残っている。
特に良さげと思った6人乗りが残っていることから、今からこれで追走してやろうではないか。
だが、俺たち男性陣は8人であり、定員オーバーであることには変わりなかった。
どうしたものかと考えた果てに、リアカーを借りて接続し、牽引することを思い付いたが……おい、マツダイラ君とウキタ君はどこへ行った?
嫌な予感がして湖の方へと目をやると、人間失格の作者のように入水するウキタ君の姿が……幸いにして、状況的に彼1人だけなので安心だ。
そのうち、大きな水しぶきをあげながら泳ぎ始めたウキタ君、あとで合流しよう。
もう1人の問題児であるマツダイラ君は、どこからか馬を借りてきたようで、先導を買ってくれるようだ。
よし、俺たちも上様に続け!————。
◇
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